8話 殺したくない
誰かを殺すなんてしたくない。
どうしたらいいの?
気づいたら私は声を上げて泣いていた。
どうして泣く時は声が出るんだろう。
「小松さん、どうしたんだ?」
私のことを気にかけてくれる人なんていないと思っていた。異性でも同性でもね。
「紙に書いてもいい、何があったか教えて欲しい」
「ぁ...っ」
やっぱりだめちゃんと声が出ない。
でも少しだけ出せた、なんで彼の前なら出るの。
「無理して声に出さなくてもいいから」
彼は私が声をうまく出せないことをわかっていた。
私は話せないから。
たすけて この 4文字を震えながらなんとか書いた。
迷惑がかかるからいやなのに...。
「何があったかわからないけど、俺は君を助けたいから気にしないで」
「連絡先交換しよう」
話せないから交換することになった。
「これで話せるようなにったな!」
トーク画面に言いたいことを打ち込んでいく。
「よろしく、小松さん」
「じゃ、また明日」
手を振り返して私は学校から出た。
今日は4時間目までだからもう終わり。
彼は一体どういう理由で私に近づくのか。そのことを考えながら帰った。
誰も殺したくないし、殺されたくない。
怖くて、怖くて全く食欲がわかなかった。
昼も夜も何も食べずに過ごした。
ピコンとかわいい音の通知音が鳴った。
相手は…今日交換した彼からだった。




