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第20話 誘われた

「シンディ、最近王都で起きている奇妙な殺人事件を知っているか?」


 俺はシンディのいる部屋に行き、事件について何か知っていないか尋ねた。


「あー、そういえばギルドマスターから直々に調査を頼まれたみたいだね。Bランク昇進おめでとう!」

「何で知ってるんだよ」

「まあ、商人だからね〜。それぐらいの情報網は有しているさ」


 え、何それ。

 商人凄すぎだろ。


「じゃあ殺人事件の事も何か知っているのか?」

「もちろん知っているよ。でも、タダじゃ教えられないなぁ〜」

「金か?残念ながらお前が望むような額は持ってないぞ」

「ノンノン。私は大金持ちなんだぜい?貧乏人のノア君から金を取るわけなかろう!」

「じゃあ一体何を……って、おい」


 シンディが俺に密着してきて、いやらしく腰を動かしてきた。

 リリアよりはある少し豊満な胸を俺に押しつけながら、俺の頬に触る。


「私、実は少し溜まってるんだぁ〜。ノア君が私を満足させてくれたら教えてあげてもいいよ?」

「そうか。なら遠慮しとく」


 そう言って、俺に纏わりつくシンディを離した。


「もう!ノア君のバカ!女の子から誘ってるんだから、ちゃんと受けなきゃダメでしょ!」

「今のところお前と肉体関係を持つつもりはないだけだ」


 女って奴は、肉体関係を持つとそれを誇示し、束縛する。

 自由を求める俺にとって、それは弊害でしかない。俺がシンディを好いていて、愛しているならまだ一考の余地はあるが、今のところそれはない。


「はぁ〜。予想通りと言えば、予想通りなんだけどさ。本当にしてくるかね、普通」

「悪いな。だが、別にお前に魅力がないわけじゃないから安心しろ」

「むぅー。それ喜べばいいのか落ち込めばいいのか分からないんですけど!」

「俺が知るか」


 どうやら頼みの綱だったシンディは情報を教えてくれそうにないな。

 他を当たるか。

 そう思い、部屋を出て行こうとする。


「ちょっとノア君待ちなさい。仕方ないから情報教えてあげるよ!」


 それは思ってもみない言葉だった。


「なに、本当か?」

「こんな事で嘘つく訳ないでしょ、もう」

「……何か今のお前リリアに似てるな」

「そりゃ姉妹なんだからね?」


 何となくだが、今のシンディはリリアに似ていると感じた。誘いを断られて余裕がなくなったのだろうか。

 となると、シンディは余裕がなくなるとリリアみたいに反応が面白くなるという事だな。

 ……今後の付き合い方の参考にしようかと思ったが、後が怖そうだ。


「あの殺人事件はね、想定済みかもしれないけど人間の犯行じゃない。死体は魔力が枯渇していて、犯人は魔力を欲しているみたいね。で、犯行時間は皆が寝静まった深夜に週に一回のペースで行われているわ。そろそろ被害者が出る頃じゃないかなー」


 犯行資料から分かる考察のようだ。

 これは一般には公開されていない情報だろうな。


「よく調べてあるな。他には無いのか?」


 顎に手を当てて考えるシンディ。


「うーん、犯人は強敵だということしか分からないわ。警備を強化するために見回りをする騎士を増員したんだけど、犯行現場を目撃した騎士はみんな死体で発見されたらしいよ」

「まじかよ。そんな事件の調査させるとマジで勘弁してくれよ」

「――だからじゃない?ギルドマスターは、ああ見えて悪巧みが上手いからね。ノア君がその事件で死ぬような奴なら別にどうでもいいって考えてるんじゃないかな〜」


 笑顔で恐ろしい事を言うシンディ。

 だが、あながち間違っていないだろうな。


「そいつは怖いな。あまり積極的に調査しなくてもいみたいな事言ってたし、関わらないようにしとこ」

「ハハハ、そうだね。私もノア君に死なれたら悲しいよ」


 もうシンディから聞ける事は無さそうだ。

 このままシンディの部屋にいたら襲われる恐れがあるので、とっとと逃げ出したい。


「すごい役に立つ情報ありがとな。じゃ、俺は自分の部屋に戻るわ」

「ノア君、私と一緒に寝ないのかいー?」

「寝るか!」


 穏便に出ていこうかと思ったが、俺はとっとと部屋を出た。

 そして今日、俺の中でシンディに対する印象が変わった。


 シンディはエロい。


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