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第18話 ケータイって何ですか?

「さて、Bランクになったノア君に一つ頼みがある」

「……いきなりだな」

「まあまあ。とにかく話だけでも聞いてみてくれたまえ。最近、この街で奇妙な殺人事件が起きているんだ」

「奇妙な殺人事件?」

「ああ、被害者は男性だけで死体は全て何者かに吸い取られたかのように干からびているんだ」

「へぇー。確かに奇妙な殺人事件だな」

「その事件をノア君で調査してほしいんだ。なに、調査といっても真剣に取り組まなくていい。真剣に取り組めと言うと、君は間違いなく断るだろうから」


 ……何か読まれてないか?

 その殺人事件よりアンタの方が奇妙だと思うのだが。


「って言っても真剣に取り組まなくていいなら何してりゃいいんだよ」

「お、少し興味があるようだね。感心感心」


 ニコニコと笑うデューイの顔面を今すぐにでも殴ってやりたくなった。

 だが、コイツはこれでもギルドマスターだ。

 殴れば大ごとになるのは間違いない。

 鋼の自制心でこの衝動を抑える。


「まあ、簡単に言えばしばらくの間この街で滞在していてほしいんだ。何をしてもらっていても構わない。それに滞在期間は私が君に宿代として毎日2000ペルを支給しよう」


 なにっ!?

 毎日2000ペル支給だと!?

 えーと、それじゃあシンディの家に世話になって、一ヶ月滞在していれば……約6万ペルの儲け……だと?!


「仕方ない。そこまで言うなら俺とて鬼ではない。引き受けてやろう」

「急に顔色を変えたね。どうしたんだい?……まあ、何でもいいんだけどさ。この街で何か変なことや気になる事があったら随時僕に知らせてくれよ。ケータイの番号教えるからさ」

「ケータイ?何だそれは」

「あれ、もしかして知らない?ありゃま、あんな便利な魔導具を知らないのかい」


 どうやらケータイは魔導具の一種らしい。


「知らねーよ。そんなに便利なら2000ペルと同様に支給しやがれ」

「……君、僕がギルドマスターっていう認識はあるかい?何か段々と口が悪くなっていってるよ」

「ダメか?」

「いや?ますますノア君を気に入ったよ!」


 何でそうなるんだよ。

 はぁ、と溜息をつく。


「ケータイは確かに便利だから君に支給しておこう。こんな高待遇普通ならあり得ないからね?分かってる?」

「へいへい。感謝してますよ」

「うむ。よろしい。では、ケータイを持ってくるから少し待っていてくれたまえ」



 そう言って、デューイは部屋を出ていった。

 で、暫くするとご機嫌な顔で戻ってきた。


「いやー、お待たせ。ちょうど1個残ってたよ。はい、これ」


 デューイが手渡してきたのは、少し光沢を帯びた物だった。

 一体、これはどうやって使えばいいんだ。


「じゃあ使い方を説明するよ。まず、これを使うには魔力を注ぎ込むんだ。で、注ぎ込んだらケータイを開く。すると、画面が光るのでここから連絡先に登録されている人に話したり、文を送る事が出来る。これを使って話す事を通話、文を送る事をメールというらしいよ」


 デューイの説明通りにケータイを操作してみた。

 この十字ボタンを押すことによって、使用する機能を選択出来るようだ。

 で、早速通話をしてみようと思ったのだが。


「む。連絡先がないぞ」

「そりゃ、まだ連絡先を登録してないからね。では、まず僕の連絡先を登録してみよう。この8桁の番号を登録してごらん」


 デューイはケータイをポケットから取り出して、画面を見せる。

 そこにはデューイが言う8桁の番号が映し出されており、それを自分のケータイに打ち込み登録する。


「これで良いのか?」

「うん、上出来だ。試しに通話をかけてみてごらん」


 ポチポチとボタンを押して、デューイに通話をかける。


 プルルルル


「この音が鳴ったら自分のケータイに通話がかかってきたって事だよ。で、このボタンを押すと通話に出れる。じゃあ、部屋の外に出てみるから実際に話せるかやってみようか」


 そう言って、デューイは部屋の外に出て行く。

 すると、ケータイからデューイの声が聞こえてきた。


「やあ、ノア君。こうやってケータイってのは離れたところでも通話が出来るんだ」

「すげえな。こんな魔導具が開発されてるとは知らなかったぞ」

「あはは、まあ最近出来たものだし、まだ開発段階のもので商品として売り出されてないものだからね」


 最近出来たのかよ。

 しかも売り出されてないものらしいし、知らなくて当然じゃねーか。


「だったらさっきの『知らないの?』みたいな反応やめろ。しかも、売り出されてないものなら最初から俺に渡す気だっただろ」

「あ、バレちゃった?やっぱりノア君は鋭いね。殺人事件の調査を任せて正解だったかも。じゃあ、一回通話を切るよ」


 そう言われた後、ケータイからはデューイの声は聞こえなくなり、ツーツーという音が鳴っている。

 ケータイを閉じてみると、音は止まった。


 バタンと扉が開く。


「どうだい?ケータイは便利な道具だろ?それで使い方はもうバッチリかな?」

「ああ、メールだっけか?それのやり方も何となく分かりそうだ」

「ほうほう。それは素晴らしい。では、これにてお開きとしようか。調査は頭の片隅にでも置いておいて、この街を満喫してみてくれたまえ。君の興味を引くものがたくさんあるだろうさ。それでは失礼するよ」


 そう言って、俺を残して部屋を出ていくギルドマスター。

 ……俺も部屋を出るか。


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