18歳で悟りを開いてみました。
シリアス風味のギャグ?
リハビリで書いたので、とても纏まりがない話になっておりますが、お付き合いいただけたら嬉しいです。
―――ああ、この世界も駄目だった…。
転生したとわかってから、この世界でただ懸命に生きようと思った。
中級貴族として生を受け、同じくらいの中級貴族の男と出会い貴族には珍しい恋愛結婚をした。
お金持ちというわけでもないけれど、穏やかに笑いのある家庭を築き幸せだった。
だけど、いつの間にかいた夫の愛人に殺された。
幸せだと感じていたのは、私だけだったのだ。
それでも一度目生き返った時には、この幸運を神にただただ感謝の言葉をささげ祈りをささげた。
愛した男の女に殺されなくていい方法を探して、今度こそは幸せになればいい。
そんな楽観的な思いのまま始まった二度目の人生でも、同じように女に殺された。
三度目はかなり慎重になった。友人を増やし周囲の声に傾け色んな情報を集め、何故夫の愛人に殺されることになったのか考え、夫が愛人に出会わないように仕向けたりもした。
―――なのに、結局出会い殺された。
本当に何が何だかわからない。
これって…なにをやっても殺される運命の悪役令嬢に生まれた、という設定なのかもしれない。
だから意味が分からないまま殺され、生き返る。
まるでゾンビだ。
転生ものだったらこのあたりで人生が好転するはずなのだけど、そんな様子もない。
愛人を作るような男でも愛していたが、4度目生き返った時今、元夫のことはすっぱりと諦めることにする。
何度試行錯誤したところで同じ結果なら、関わらないほうが幸せになれる確率が上がるに違いない。
殺されるためだけに生き返っているとか、どこの変態だ。
もう、いいでしょ。
そんな気持ちで元夫のことは全く視界に入れないように、とにかく逃げ回った。
出会うきっかけになる夜会や避暑地など、わざと体調を崩して寝込んだくらいだ。
そんな努力のおかげで、結婚するはずの18歳にまで出会うことがなかった。
今度こそは!逃げ切った!
あの男を避けることが出来ているならば、少しは楔も切れたのかもしれない。
これから負の連鎖を断ち切ればいい。
そう安心していたのに。いつまでも婚約者をつくらない私に、親が嵌めるようにして決めた結婚の相手が元夫だった。
ほんと、意味が分からない。
どこまでこの世界は私に死んでほしいのだろうか。
私が何をしたというの?!
ただ巡りあわせや運が悪くて、ありえない事態へと流れただけだというのに。
死んでほしいなら、世界を巻き戻しなければいいのに。
5回目、6回目となるころには無駄な動きをすることなく、流され決まった事項のように物語が流れていく。それをまるで自分が出演する映画のように、息をして観ていた。
生きることになんの意義も意味を見いだせず、ただ世界の傍観者となっていた。
この頃にはもう、狂っていたのだろう。
憎悪に塗れた感情を向けられ殺されること数回。
これで真っ当なほうがどうかしている。
そんな私の魂が消耗し、消えるだろうというときになって初めて、神と名乗る者が現れた。
「君に世界を救うことになる子供を産んでほしかったのだ」
なんだそれ。
一人で子供が産めるわけがないじゃない。
馬鹿っじゃないの!!
「異世界の魂を持つ君と、異世界の子孫であるあの男の子でなければ、ならなかったのだ」
そんなこと今更言われてもね。
今から殺されるところだというのに。
もし殺されず逃げることができたとしても、目の前の男を愛せるわけがない。
―――この世界なんてクソくらえだ!
消える間際のこの世界で変わったことがあったなら、私より先に夫の愛人が死んだことだろうか。
いつもならその愛人に殺され、死んでいたのだから。
いや、結局その愛人のせいで今夫に殺されそうになっているのだから、変わっていない。
でも、もう何でもいいよ。どうせ、消えるのだから…。
夫の唯一無二の女の亡骸を抱きしめながら、私を呪詛と共に葬ろうとしている夫だった男を見た。
冷たく嘲笑いながら私を見る碧色の目が、焔のように染まり切っていた。
こうなってしまえば、どんなに言い募っても私の声など届かないだろう。
今でなくてもいつだって、今世で声が届いたことはない。
『ああ』
生返事のそんな声しか拾ったことがないのだから、呪詛を聞いている今ですら「声出せるのか」と呑気の思った。
―――やっと死ねる…
邪魔はしないでね。
誰にとは言わなくても、空に向かって言えばこの声は届いているはずだ。
この世界を救いたいといいながら、自分で壊すような干渉をしてよく言うわ。
放ってくれていたら、私的にまだ救われたこともあった。
初夜に夫に精神干渉したことだけは、許せない。そのせいで私が薬を盛ったと思われて、それから全く姿を見ることさえなくなった。
私を同じ世界で5回も殺した、残酷な神よ。
この世界を救いたいと言いながら破滅に導いたその責任は、自らとって。
同じ人生といえども今世6度の人生を生きた私は、浄土という名の元に魂はこれで消滅するのだから。
目を閉じてやってくる衝撃に耐える準備をする。
さよなら
衝撃が来ない。
流石に最後ぐらいは神も反省して、痛みがない死に方をさせてくれるのかしら?
「何故、穏やかな顔ができる?」
「俺がお前を殺すわけがないと、思っているのか?」
今更何を言いの出すのだろうか、この男は。
さっさと胸を一突きすればいいのに。
やっとここまで漕ぎつけて死ねるのに、最後に感情を揺らされたくない私は、目を瞑ったまま答える。
「あなた達に5度も殺されて、今更何も言うことはないわ」
「…そうか」
その答えに違和感を感じながら、それでも私は早く死ねることを祈る。
「すまなかった」
「そんな謝罪なんていい。さっさと殺して」
なんでこの男はそんなことを今更言うのか、と思うよりも反射的に本能が答えた。
それからどれだけ待っても、衝撃どころか音さえない無の世界だけがそこにはあった。
突然頭に声が響く。
『おめでとう!これで世界は救われる』
ふざけた神らしき者の声に、激怒した。
誰があの男との間に子供など作るか!
この世界を救う?
冗談じゃない。滅んでしまえ!!
滅びの呪文を言わずして願っただけで、目の前の景色がガラスが割れるようにひび割れ、そして崩れていく。
ちょっとだけ、ちょっとだけ叫んでみたかったのだけど天空での滅びの呪文…。
その割れて無くなった景色の前には、ただ光がさしていた。
そしてまた別の声が頭に響く。先ほどの者よりは、なんとなく普通そうな神。
『おめでとう!新しい生の始まりだよ。苦難を乗り越えた今、今期の生は輝かしいものとなると思う。因果応報ってやつだよ』
私はその声の主に勝てそうな気がしたので、拳でお話することにした。
「誰が勝手に転生させろと言ったのよ!ふざけないで!!」
その声の主が拳でお話の末倒れた時に、ゲームのようなレベルアップ音が鳴る。
そしてなったと思ったら、それから30分はレベルアップ音が鳴る響くという災難に見舞われることになった。
鳴り終えたときレベル50になりましたので転職ができます、と頭に響く。
今更レベルアップとか転職とか…。
そんなことを思いながらチラリと見えたその連ねられた職業を見て、消えることをやめることにした。
この職業になり、この世界を作った人間にお仕置きをし、駄作ともいえるこの世界すべてを書き換えるのだ!
そう、小説家
自分が幸せになる小説を書いて、人生楽しむことにした。
自分の人生は、自分で描く!!
一カ月もの眠りから目覚めたときには、そんな決意をしていた。
どうやら私、雨宮麗華は三角関係のもつれにより、彼氏の浮気相手に刺され昏睡状態に陥っていたらしい。その時に何の因果か、妬み、憎しみ、悲しみに溢れた文字を書き殴ったモノが具現化され、自分に降りかかっていたようだった。
今となってはそれが夢なのか、現実なのかはわからない。
ただ今わかっているのは、「もう男なんていらない」だ。
あれ?
―――なんてこった。
それって小説家になる!と決意しながら、恋愛小説ってやつが書けないんじゃない?
ま、いいか。
人生長いしね。
雨宮麗華 18歳
悟り開いてみました。
読んで頂き、ありがとうございました。