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18.接近


オフ会から帰宅すると、既に日付けが変わっていた。

明日も朝早くから仕事だが、リフレインには時間通りに起きれる『機能』が付いているのが実に助かる。


ヘッドホンには右耳当ての部分に物理キーが付いており、そこでセットになっている液晶と照らし合わせながらタイマーのセットを行うことで、夢世界から強制的に帰還できる仕組みになっている。


本来は向こうの世界で睡眠をとることで現実に引き戻されるのだが、起きている状態で帰還することで向こうの身体がどうなるんだろうか。

あまり深く考えたことは無かったが、少し心配になる。


「さて、今日も行くか」


俺はリフレインを装着すると、ゆっくりと目を閉じた。








──ゆっくりと目を開ける。


何をしていたんだっけ。

そうだ、『私』は。


私は、追っ手から逃げるために歩いている最中だった。


村を脱出してどれくらいの時間が経過したのだろうか。

山火事はある程度落ち着いたのか、煙が燻っているところがチラホラあるだけで、延焼し続けている所はなさそうだ。



結局薬の材料になりそうな物は見当たらず、食料も水も無い状態がずっと続いている。


低血糖状態なのか、考えるという動作をする気になれず、更に目眩と吐き気が酷くなってきた。

それよりも喉の乾きが深刻で、脱水症状なのだろう、手足の痺れが顕著に現れている。

足の痛みなど考える余裕もない。



スコットも同じ状況だというのに顔色一つ変えることなく歩き続けていられるのは、やはりモンスターが化けているからなのだろうか。



正直そろそろ限界で、いつ倒れてもおかしくない状態だと思う。



──このまま倒れたら楽になれるのかな、それとも苦しんで死ぬのかな。



一瞬でもそう思ったら、亡き友に示しがつかない。

だから、こんな所で野垂れ死んでいるわけにはいかない。

歩くんだ、歩いて生き延びるんだ。






「グギャー!グギャーーーッ!!」




追手らしき集団の鳴き声がする。


オークは言葉を話す生き物だ、ということは──



──オークではない!!



高速で近づいてくる集団は、後方すぐにまで迫っている。

でも、もう振り向く力もない。


回り込んで視界に入り込んできたのは、異形の怪物たちだった。


目から赤い涙を流し、だらしなく開いた口からは泡状の涎がボタボタと垂れている。

そして、身体がボロボロに朽ちている者までいる。

何よりも、その腐臭で鼻が落ちそうだ。


私はこの生き物を伝承で聞いたことがある。

実在するとはまさか思いもしなかったが、その外見は間違いなくあの魔物だろう。




──オークゾンビ。


アルハザードでも屈指の怪力のオークが、呪いによりアンデッドに生まれ変わった姿。

腕が落ちようが、心臓を貫こうが、頭部を切断しようが死に絶えることは無い。


あいつらを送るには、『焼却』するしかない。


だが、炎魔法を使える種族は人間か魔族のみ。

ハイエルフのスコットも炎魔法は使えるが、期待はしない方がいいだろう。


一体どうしたら。

死の宣告を突きつけられ、私は立ち尽くす。


そんな中で父が口を開いて奴らにこう言った。

その言葉は、私を二回目の絶望に陥れるには充分すぎる言葉だった。







「──待っていたぞ、さあ、我々を殺せ!!」

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