異世界に来て、性転換しちゃった☆
「クッソ、あのバカ絶対にいつか殴ってやる……」
そんな独り言を言いながら、俺はパソコンを立ち上げた。今日もまた、色々な理不尽に揉みしだかれ、ストレスが溜まった。溜まったならば、発散しなければ。
だかしかし。
「…………って、そうか。今日は大型アプデか」
すっかり忘れていた俺は、溜め息をついた。
終了時刻は「未定」と書かれていて、どうやら長引きそうだ。
酒も飲めず、他にも趣味もないので、俺は大人しく床についた。
眠気が迫ってきた時に、ふと思った。
この仮想世界が、現実世界になったなら。俺は、ずっと人気者でいられるのに…………と。
『雪兎@テスト明け さんが 現実世界 を ログアウト しました』
『雪兎@テスト明け さんが ログイン しました』
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「んっ…………」
眩しい太陽の光で目が覚めた。
カーテンは常に閉めてるはずなんだが……。
「なんだ……? 身体が軽い……」
しかも、なんか草の匂いが……
「は?」
思わず呟く。
俺が寝ていたのは、布団ではなかった。
草原。子供の頃に遊んだことのある、陽の匂いが染み込んだ草原の上だった。
全くの意味不明さに、俺はまだ夢の中だと思った。
しかし、この草の感触。匂い。そして陽の暖かさ。間違いなく現実そのものだ。
何だこれは?
誘拐された? もしくは、夢遊病か?
様々な憶測が脳内で溢れかえるが、明確な答えは得られない。
それにもう一つ不思議な事があった。
「なんだこの長い髪……。しかも銀髪だし……」
ある不吉な予感がした。視線を胸に移すと、確かにそこには女の子しか持ち得ない膨らみがあった。
間違いない。俺は、女だ。女になってしまっている。
しかも、銀髪や服装からして、俺が演じてる女性キャラの『雪兎』に。
「意味が分からん……。なんだこれ……」
状況が呑み込めない俺は、辺りを見渡した。
ただの草原だと思っていたが、そこは見た事のある風景だった。
「『駆け出しの草原』、なのか……?」
『アイリス・オンライン』で、主に初心者用のバトルフィールドである『駆け出しの草原』。その象徴とも言える、大きな風車が遠くに見えた。
「ということは、ここはゲームの中……?『アイリス・オンライン』の中なのか!?」
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「マジかよ……。俺、ホントに«雪兎»になったのかよ……」
しばらくして落ち着いた俺だったが、まだ状況を飲み込めることができなかった。
様々な疑問が、脳内で駆け巡る。
誰が?どうやって?目的は?俺の元の体はどうなった?仕事はどうなる?いや、そんなことよりどうやったらここから抜け出せるんだ?
しかし、当たり前だが答えは出てこない。一つの謎も解決できそうになかった。
「……色々悩んでても埒が明かないな」
そう思った俺は、ひとまずの目的地を決定した。
ここが『アイリス・オンライン』ならば、この草原の先にはちょっとした街がある。『サンライト・シティ』と呼ばれる、主に初心者が活動の拠点としている街だ。
とりあえず、そこに行って情報収集をしなければならない。それが当面の目標だ。
「それじゃあ、行くか……」
立ち上がると、いつもより視点が低いことに気がついた。どうやら身長も、俺が設定した«雪兎»の身長になってるらしい。なんだか落ち着かない。
「しかし、こんな華奢な身体で今までモンスターと戦ってきたのか……」
改めて、自分の身体を見る。
剣など持てそうにない細い腕に、白いニーソックスを履いた健康的な太股。胸はオタク向けにわざと貧相にしたが、それでも確実に男性にはない脂肪が付いていた。
その小さな胸を思わず揉む。とても柔らかい。
「……なんだか、イケナイ事をしてる様な気分だ」
自らを客観的に見ると、自らの旨を揉みしだく変態である。しかし、どうしても確認しなければならない事があった。
「……股間はどうなってんだろ?」
恐怖と、ほんのちょっぴりの期待があった。果たして、そこにあるのは長い付き合いの愛剣か。はたまた、全く新しいの鞘なのか。心臓の音は大きくなっており、呼吸も荒くなっていた。
遂に、俺は覚悟を決めて股間に手を伸ばす。
答えは剣か?鞘か?それとも、どっちもか?
「鞘だ………………」