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ネカマ・オンライン  作者: 中神 遥香
3/4

異世界に来て、性転換しちゃった☆

 

「クッソ、あのバカ絶対にいつか殴ってやる……」


 そんな独り言を言いながら、俺はパソコンを立ち上げた。今日もまた、色々な理不尽に揉みしだかれ、ストレスが溜まった。溜まったならば、発散しなければ。

 だかしかし。


「…………って、そうか。今日は大型アプデか」


 すっかり忘れていた俺は、溜め息をついた。

 終了時刻は「未定」と書かれていて、どうやら長引きそうだ。

 酒も飲めず、他にも趣味もないので、俺は大人しく床についた。

 眠気が迫ってきた時に、ふと思った。

 この仮想世界が、現実世界になったなら。俺は、ずっと人気者でいられるのに…………と。











『雪兎@テスト明け さんが 現実世界 を ログアウト しました』



『雪兎@テスト明け さんが ログイン しました』




 ーーー

 ーーーーーー

 ーーーーーーーーー



「んっ…………」


 眩しい太陽の光で目が覚めた。

 カーテンは常に閉めてるはずなんだが……。


「なんだ……? 身体が軽い……」


 しかも、なんか草の匂いが……


「は?」


 思わず呟く。

 俺が寝ていたのは、布団ではなかった。

 草原。子供の頃に遊んだことのある、陽の匂いが染み込んだ草原の上だった。

 全くの意味不明さに、俺はまだ夢の中だと思った。

 しかし、この草の感触。匂い。そして陽の暖かさ。間違いなく現実そのものだ。

 何だこれは?

 誘拐された? もしくは、夢遊病か?

 様々な憶測が脳内で溢れかえるが、明確な答えは得られない。

 それにもう一つ不思議な事があった。


「なんだこの長い髪……。しかも銀髪だし……」


 ある不吉な予感がした。視線を胸に移すと、確かにそこには女の子しか持ち得ない膨らみがあった。

 間違いない。俺は、女だ。女になってしまっている。

 しかも、銀髪や服装からして、俺が演じてる女性キャラの『雪兎』に。


「意味が分からん……。なんだこれ……」


 状況が呑み込めない俺は、辺りを見渡した。

 ただの草原だと思っていたが、そこは見た事のある風景だった。


「『駆け出しの草原』、なのか……?」


『アイリス・オンライン』で、主に初心者用のバトルフィールドである『駆け出しの草原』。その象徴とも言える、大きな風車が遠くに見えた。


「ということは、ここはゲームの中……?『アイリス・オンライン』の中なのか!?」






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「マジかよ……。俺、ホントに«雪兎»になったのかよ……」


 しばらくして落ち着いた俺だったが、まだ状況を飲み込めることができなかった。

 様々な疑問が、脳内で駆け巡る。

 誰が?どうやって?目的は?俺の元の体はどうなった?仕事はどうなる?いや、そんなことよりどうやったらここから抜け出せるんだ?

 しかし、当たり前だが答えは出てこない。一つの謎も解決できそうになかった。


「……色々悩んでても埒が明かないな」


 そう思った俺は、ひとまずの目的地を決定した。

 ここが『アイリス・オンライン』ならば、この草原の先にはちょっとした街がある。『サンライト・シティ』と呼ばれる、主に初心者が活動の拠点としている街だ。

 とりあえず、そこに行って情報収集をしなければならない。それが当面の目標だ。


「それじゃあ、行くか……」


 立ち上がると、いつもより視点が低いことに気がついた。どうやら身長も、俺が設定した«雪兎»の身長になってるらしい。なんだか落ち着かない。


「しかし、こんな華奢な身体で今までモンスターと戦ってきたのか……」


 改めて、自分の身体を見る。

 剣など持てそうにない細い腕に、白いニーソックスを履いた健康的な太股。胸はオタク向けにわざと貧相にしたが、それでも確実に男性にはない脂肪が付いていた。

 その小さな胸を思わず揉む。とても柔らかい。


「……なんだか、イケナイ事をしてる様な気分だ」


 自らを客観的に見ると、自らの旨を揉みしだく変態である。しかし、どうしても確認しなければならない事があった。


「……股間はどうなってんだろ?」


 恐怖と、ほんのちょっぴりの期待があった。果たして、そこにあるのは長い付き合いの愛剣か。はたまた、全く新しいの鞘なのか。心臓の音は大きくなっており、呼吸も荒くなっていた。

 遂に、俺は覚悟を決めて股間に手を伸ばす。

 答えは剣か?鞘か?それとも、どっちもか?








「鞘だ………………」


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