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プロローグ

 あたりが暗く周りは石の壁で囲まれた空間


 その中に一人ゼーゼーと息を切らせ、手の皮膚が擦り剝けて血まみれになって倒れている少年


 少年の顔は怒りか悲しみか、それとも恐怖なのかわからないくらいに顔を歪ませた表情だった。


「くそ……どうして……俺はただ……妹を……助けたかった……だけなのに」


 周りには誰もおらず、返事をする者もいない。だが少年は叫ばずにはいられなかった。


 そして彼は意識を失った。




 ◇◇◇◇◇




 目を覚ますと少年はありえない場所にいた。


 あたり一帯が何もない真っ白な壁の空間、風の音も全くせず、それどころかほかの音も聞こえない。


「ここは……どこだ?」


 まず整理しよう。


 ここに見覚えがあるか?


 答えはNOだ。


 こんなところに来れるはずもないし、来たいとも思わないだろう。


 そもそも自分は寝ていたはずだ。


 ならば答えは一つ


「連れてこられた……てことか」 


 連れてこられた。


 つまり誘拐というわけだな。


 手や足は縛られてないが、犯人がそこまで間抜けというだけだろう。


 そんなことを考えていると、光のようなものが俺の目の前に出現した。


 その中から一人の少女が出てきた。おっとりとした顔に、腰まで届く黒い髪


 明らかに美人に分類されるであろう少女だった。


「あなたが、月影海さんですね」

 

 少女は微笑みながら、優しく声をかけてきた。


「あんたがここに連れてきたのか?」


「はい、そうですよ」


 少女はにっこりとそう話した。


「そうか」


 海はにっこりと笑顔で返した。


 そして






 その少女の脇腹めがけて蹴りを入れた。


「え!」


 少女はいきなりの事で反応できずもろに蹴りをくらった。


 少女はふっとばされ横に回転しながら、ゴロゴロと転がっていった。


 しばらく少女は動かなかったが、意識を取り戻してこっちにゆっくりと歩いてきた。


「何するんですかぁぁぁ!」


 少女は耳をふさがなければいけないような大きな声で叫んだ。


「誘拐犯に慈悲はない」


 海はあたりまえだろという顔で言った。


「誘拐犯じゃないですよぉぉぉ!」


 少女は涙目になりながら叫んだ。


 さすがに悪いと思い、海も申し訳なくなった。


「悪かったって、だから泣き止めよ」


 少女は少し鼻をすすりながらではあるが、泣き止んだようだ。


(このまま、あの状態だったら面倒だったからな)


 そう口に出そうか迷ったが、心の中で止めておくことにした。


 少女は改まって話し始めた。


「それではもう一度、あなたは月影海さんで間違いないですね」


「あぁ……」


「おめでとうございます! あなたは私の勇者に選ばれました」


「……はぁ」


 海は優しい笑顔で、少女の肩に手をのせて


「ごめんな」


「……え!」


 少女はいきなりの謝罪に驚き、あたふたしていた。


「頭の打ちどころが悪かったんだよな、だからそんなバカなこと言ってるんだよな、ごめんな俺のせいで」

「違いますよ! 私は真面目に……」


「大丈夫だ、いい医者を紹介してやるから」


 少女は肩をプルプルと震わせ


「話を聞いてくださいよぉぉぉ!」


 さっき以上に叫んだ。



 ◇◇◇◇◇



 話をまとめるとこんな感じだ。


 異世界を管理している神は七人の女性と結婚し子供が七人生まれた。


 だが七人の女たちは、それぞれが自分とだけ結婚してると思っていた。


 だがある日そのことがばれて、七人の女たちは大激怒、七人の子供を神に押し付けて出て行ってしまった。

 そこまではよかったんだ、いやよくもないけど、とにかくよかったのだ。


 子供たちは成長し、異世界の神の個別の担当を任せられるまでになった。


 だが神は思った、自分の次の代はどうすればいいのだろうと、だが神は一人だけ決めるということが出来なかった。


 まぁ七人と子供作るような奴だしね。

 

 そして神はあることを思いつく。


 それが勇者召喚、子供たち一人一人が勇者を呼び、戦わせ、勝った勇者を担当した子供が次の後継人となるという仕組みだ。


 そして現在神の子供の一人の少女が俺を呼んだというわけらしい。


 まぁこれより彼女の話は長かったので、まとめてるとこういうことらしい。


 話を聞いてるうちに海には疑問ができた。


「これじゃあ勇者にメリットがないが、全員が慈善活動でやってるのか?」


「いえそういう人は少ないですね。ですが勇者にもメリットはありますよ」


 そして少女はどこから取り出したかわからないが、ホワイトボードを目の前に出現させる。


「なぁそれどうやってるんだ?」


「あぁ異次元から取り出しただけなので気にしないでください」


 いやそう言われると気になるんだが、あれであろう気にしたら負けという奴だろう。


 そうして彼女は話を続ける。


 ですがまたしても長いので自分で簡単にまとめてみた。




 一、勇者には前払いとして願いを叶える権利が与えられる


 二、願いを叶えた時点で、戦いには強制参加


 三、勝った勇者には、帰還かここに留まるか聞かれる


 四、留まる場合は担当の子供の副神となれる


 五、帰還の場合は異世界で手に入れた物の中からいくつか持ち帰れる




 といった感じらしい。なるほどそれなら協力するわけだな。


「じゃあ次の質問だ、どうして俺なんだ」


「それは……」


 彼女は言いにくそうにしていたが、しばらくして話してくれた。


 どうやら彼女は、七人の子供の中でも最後に生まれたらしく、末っ子なので選ぶ権利は後に回され、いい人は六人に全員とられたらしい、だから残った候補の中でも俺が一番良かったから選んだとのことだ。


「けど私はそれでもよかったと思っています」


「なぜ?」


「だってこんなにスペックの高い人が来てくれたんだから」


 そしてまたしてもどこからか、紙を取り出して、俺に見せた。


 そこには俺の個人情報がびっちりと書かれていた。




 月影海15歳

 身長 170cm

 体重 56kg

 出身 日本

 小学生と中学時代は全国模試一位をキープ

 他にもスポーツは万能で様々な分野で賞をもらった経験もある





 とこのような感じの情報が続いていた。


「どうしてこんな人が残っていたのは不思議だけど、私はついてるわ」


 とはしゃいでいた。

 

 確かにここに書いてあることは嘘じゃない、嘘じゃないが


「おい、お前ここ見てないのか」


 海は紙の一部の文章を指さして言った。


 少女は紙を受け取り読むと驚きの声をあげた


「これって!」


 俺と紙を交互に見ていた。


 それもそのはずだ、だってその一文には、俺を六人が選ばなかった理由が堂々と書かれているんだから。


 そこにはこう書かれていた。




 中学生三年の時、とある裁判中に殺人未遂を行い、現在も少年院にいる。




 こんなことを書かれていれば誰だって、勇者にしようとは思わない。


 差し詰め詳しい情報を読まず、一部分だけを見て決めたのだろう。


 少女は何かを決意したのか意を決して話し出した。


「それでも、あなたを勇者にします」


「おいおい本気で言ってるのか?」


(やはりさっきの頭打ったところが悪かったか)


 そんなことを考えていると少女は真剣な表情で


「はい、私は勝ちたいのです。私は育ててもらったお父様みたいな神様になりたい!」


 そこには親に対する尊敬や憧れなどいろんな感情もあっていったのだろう。


 素直といえばいいのか、純粋といえばいいのか。


 ただ純粋に憧れに近づきたいと思う気持ちしか彼女にはないのだろう。


 そんな気持ちだけじゃ勝てない。


 だが


「おもしれぇ、いいだろう力を貸してやろうじゃねぇか」


 海は少女に向かって手を差し出した。


「お前の名前は?」


 少女は了承してくれたのがうれしいのか、目には涙を浮かべていた。


「ルナ、私の名前はルナ」


「ルナか、よろしくな」


 そうして少年はルナと手を結んだ


 それからはルナに異世界の事や戦いのルールなどを詳しく聞いた。

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