魔術とは≒呪術かもしれない
冒険者なら誰しもが憧れる"専用武器"。店売りの武器より性能が良く、見た目もかっこいい!もちろん俺も冒険者の端くれだから専用武器に憧れている。なお、現在は店売りのコモン武器を使用している。専用武器の入手方法は様々で、敵からのドロップ、ダンジョンでの捜索や鍛冶屋に依頼して作ってもらうこともある。そのほかにギルドでの階級ごとに支給されるものや人から譲ってもらうこともある。
まぁ、どの方法で入手する場合でもある程度のレベルが求められるのは言うまでもない。弱い敵からはドロップするものは大したものはないし、低レベルで行けるダンジョンなんてのは大体捜索され尽してる。鍛冶屋に頼むにも金と難易度の高いダンジョンやら強い敵からのドロップ品が必要になる。ギルドで階級を上げるのなんてのも1日2日でできるものでもないしな。あとはお金持ちのコネがあるとかリアルが充実してるような奴の手に専用武器がわたっていく。つまり、一般市民には手の届かない代物だ。だから憧れるんだけどな。
そんなことはわかりきってるけど、万が一の可能性をかけて今日も飽きずにダンジョンに向かう。もしかしたら「ダンジョンを千回、一万回クリアすると貰える専用武器」みたいなのがあるんじゃないかって期待してみたり。まだ百回もクリアしてないけどな。
俺の名はショウ・ホリバチ。駆け出しというよりかはレベルが上がっていて、中堅というにも少し物足りない、初心者を抜け出したようなそんな中途半端な時期だ。
『 ショウ ホリバチ
レベル 22
装備 ノーマルソード
ノーマルシールド
特性 座標探知 許容
称号 脱駆け出し
』
一部だが、こんな感じのごくごく平凡な装備とレベルだ。特性は各人いろいろって一人で10、20持ってるような奴もいるし、俺みたいに1個2個ってやつもいる。感覚からしたら性格だったり、特技が表示されてるようなものだと思う。ちなみに座標探知は今のところ「地図いらず」ぐらいしか役に立ってない。一回行ったところなら地図がなくてもたどり着けるし、初めての場所にも大体迷わず行ける。他の人も地図を見ながらなら可能だからそんなに特殊な能力ではないし、てかぶっちゃけみんなそれくらいできるだろ?まぁダンジョンの中で迷子にならないのはいい事だと思うけどな。もう一個の許容はよくわからんが、まぁ性格なんだろうな。あまり些事にはこだわらないと思う。
そうこうしているうちに目的のダンジョンに着いた。適性レベル20~25ってところだからレベル上げにも丁度いい。レベル上げはなんだかんだで重要だと思う。専用武器を得るには強くならなきゃいけないことが多いから、地道なレベル上げも必要だ。
ダンジョンには俺のほかにも何人か来ているみたいだ。その中には見知ったやつもいる。そのなかの一人に声をかけられる。
「お、今日も来たな。一緒に狩りに行くか?」
こいつはルコール・アッシマー。大体同じくらいの時期から冒険業をするようになった。だから順当に同じくらいのレベルになってる。ちなみにこいつは人づきあいがうまい。詳しくは知らんが、既に上級コモン武器であるクレイモアを所持している。だが、装備要求値が高いこととこいつ自身、身の丈に合った武器で自分の能力で強くなりたいってのがあって所持しているだけで装備はしていないみたい。そしてそれを自慢したりもしていない。そんなところも好感の持てるところなんだろうか?
「そうだな、折角だしな。」
適性レベルのダンジョンだからって油断はできない。もしもパーティーが組めるならそれに越したことはない。
「ついでだからもう少し待ってくれよ。多分あいつもそろそろ来るはずだから。」
あいつというのは、あいつに違いない。いつも一緒につるんでダンジョンに行くリリー・ホワイトランカ。ざっくりいうと女版ルコールみたいなやつで誰とでも気さくに話すことができる。会話のテンポもリズムよく帰ってくるから話してても楽だな。ちなみに俺たちよりも少しレベルは低いがまぁパーティーを組んでいるからそんなに気にするほどではない。特性を多く持っているのか、レベルが低くてもテクニックでカバーできてるっていう多才なやつだ。お、遠くから手を振ってきてるのがそうかな。
「おお、ルコールにショウもいたの?毎回よく会うね。それじゃあ今日も一緒に行こう?」
「丁度ショウとも話してたんだよ、それじゃいつも通りいくとするか。」
そんな感じで3人でダンジョン内部に向かう。ダンジョン入口は敵も出てこないがしばらく進むといくつかの分かれ道になっていて各パーティー毎に進むことになっている。
俺たちのパーティーはこのダンジョンに何度も潜っていてある程度マッピングできるようになっている。マッピングが目的ではないけれど、雑談をしながらダンジョンを探索しているうちに、あらかた探索し終えたといったところだ。ダンジョンによってボスがいたりいなかったりする。ボスからはドロップで武器が落ちたり、それを加工したりして強化できる。ちなみにこのダンジョンにはボスはいないはずだ。だからよっぽどの油断がなければ大けがはしない、というのもこのダンジョンに潜る理由の一つだったりする。
「今日は左攻めにしようぜ。」とルコール。
「極振りだねー。乗った!」と答えるリリー。
「じゃあ、出発だな!」と俺が声を出す。
いつもの、ダンジョン探索のはじまりだ。なんかいいことあるといいな。
宣言通りにすべての分かれ道の左の分岐を選んで進む。途中何度かの戦闘があり、現在また交戦中。10戦目くらいか?ここの敵はいわゆるゴブリン系の敵だ。素手の者もいればこん棒や手斧を使うやつもいる。俺の戦闘パターンは基本に忠実に、敵の攻撃を受け、スキができたところを攻撃。手数はかかるけど確実に攻める。今目の前の敵は手にこん棒を持った敵だ。敵が殴ろうとする部位に確実に盾を当てて、一瞬の硬直のうちに剣で刺す。
ルコールはテクニカルだ。敵の攻撃に合わせてクロスカウンター気味に倒していく。今も手斧を持つ敵の攻撃をギリギリまでひきつけ、紙一重で避けすれ違いざまに切り伏せる。動体視力がいいのかスピードが速いのか、見ててかっこいいよな。
リリーはいくつもの武器を使い分けてルコールとはまた違ったかっこよさを見せる。基本的に槍を使って相手を間合いに入れないように突きを繰り出したり、大勢の敵に対して薙ぎ払ったり、どこかの国の女武将みたいな動きをする。かと思えば敵が間合いの内に入るとさっきの槍がどこかに消えて両手でダガーを使い手数で押し切ったりする。そのダガーを投擲したり、レパートリーというか芸達者であると思う。
「よし、これでここは倒し終わったな。次にいくか。」
「えーー、ちょっと休もうよ。連戦はきついって。」
ルコールとリリーのやりとり。いつも通りのやり取りが繰り広げられている。俺は俺で2人の会話を見ながら休んでる。
「あ!ショウなに一人で休んでるの、ずるい。」
「リリーも休めばいいじゃんか。てか実際休んでるようなものだろ。」戦闘が終わって雑談してれば休憩みたいなものだろう。
「まあな。えっと、大体半分くらいに来たかな?なにか面白いもの落ちたか?」
「そんなにないね。いつものゴブリン印のこん棒とか、そんなの。」
「俺も同じだなー。あとはちっちゃい宝石たちだな。」
「そっか。まぁまだ半分あるしな。次行こうぜ!」
ルコールの促しでぼちぼちと腰を上げ、次の分岐路へ。勿論左側へ。
分岐に入って、4人組のパーティーがいたので、少し様子を見てみることにした。暗黙のルールで横取りはしない、というのがある。でも完全な無視もいけない。敵が強すぎる場合は加勢することが良い場合もあるからな。しばらく見てると向こうのパーティーの一人が気づき声をかける
「お、こっちは大丈夫だ。お先にどうぞ―。」
「お、んじゃお先―。」
なんて具合にやり取りをした。その瞬間向こうパーティーが交戦しているのとは違う敵ゴブリンたちが俺たちの後ろから現れた。
「ルコール、先に行くの待って、後ろからゴブリンが来てるよ!」
「何?」
「おーい、そこの3人組、後ろのやつは任せていいか?」
ルコールとリリーがやり取りしている間にさっきの一人が声をかける。
「わかった、受け持とう。いいよな?ルコール、リリー?」
「もちろん。」
「いいね、なんか共闘してる感じがいいよね、あとで話しかけにいこぜ。」
「戦いが終わったらね!」
後ろから来た敵に対応できるように体制を整えながら受け答えをしあう。
リリーは混戦に備え槍ではなくダガーを装備する。ルコールはいつも通り、飄々としたような堂々としたような自然体で。俺も盾を構える。
なんとなくだけど、さっき戦ったゴブリンたちより強い気がする。単純に混戦に慣れていないから戦いづらいと感じているだけかもしれないけど。ルコールもそれを感じたようで
「おい、なんか強い気がしないか?それとも戦いづらいだけか?」
「どっちもじゃない?なんでだろうね?」
「考えるのは戦いが終わってからでいいんじゃないか?」
「そうね。ショウのいう通りだね。」
言葉を交わしながらも敵と剣を交えていく。攻撃を受ける。反撃する。受ける。反撃する。混戦の中にあっても俺は敵の攻撃を正確に捕捉し、また正確に返す。普段からの基礎に忠実な戦闘が無意識に体を動かしているようだ。
と、調子に乗ったのが悪かったのか、壁際に追い込まれている。追い込まれていたつもりはないけど、一度受ける動作が入ることで少なからず後退してしまったようだ。特に混戦で人と距離を取ろうと思ったことで顕著になってしまったのか。でも俺は焦らず、後ろが壁になっても戦闘パターンを崩さなかった。むしろ壁があることで受けの衝撃が相手にも伝わり硬直が長くなったように思える。
あと一手でとどめをさせるかというところで壁が音を立て壊れた。
「うわ!」
「どうした!ショウ!」
「ショウ、大丈夫?」
そのままオレは壊れた壁の隙間に吸い込まれるようにさっきの空間から姿を消した。
そんな声が遠くで聞こえた。ダンジョンが崩れるなんて、訊いたことがないんだが?




