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幕間劇   

                              幕間劇


カグラ・プランに於ける航路整備・通信維持を目的とした中継ステーションの連続襲撃事件の捜査の為に、地球連合政府は事件調査委員会を設立し、地球連合軍情報部との合同調査を命じた。委員会には、シャニアテック社(※1)の息の掛った政治家や、ゼノ・シールス(※2)派閥の軍部幹部が列席しており、一部では調査ではなく、彼らの栄達を図るための陰謀を張り巡らせているのではないか、などと言われていた事から、陰謀の糸を巡らす連中として、この事件調査委員会は巷で《蜘蛛の糸》なる愛称がつけられた。

但し、当時の噂はともかくとして、世情不安定であった状況から至極真っ当な調査能力を有する機関であった事は間違いないだろう。金星との軋轢だけでなく、コロニー、火星、月面都市など様々な争乱の火種が燻って状況下にあって、正確な情報把握は彼らにとって必要不可欠な事であったのだから。

ただ、この調査期間の愛称については、一概に噂で片付けられるものではなく、一説によるとゼノ・シールスが己の自由になる諜報組織の設立を睨んでの行動とも言われていた。事実、この時期に地球連合軍内では複数の軍閥が密談を繰り返していたなど、軍事に詳しい者などは、新生地球連合軍の権力闘争ではないか、との見方もされていた。


                         〜中略〜


結果から云えば、これら一連の事件は「火星解放戦線」による、地球連合への示威行為との結論に落ち着いた。ただし、その証拠は一切明示される事無く、また犯人とされた者が捕まったという発表もついに行われる事がなかった。

「火星解放戦線」は火星都市同盟という独立政府樹立を宣言し、地球連合軍と深刻な対立関係になった事は記憶に新しいが、1年間に渡る争乱と外交調整により火星の独立が認めさせた組織である。この火星独立の裏には、《蜘蛛の糸》メンバーによる暗躍があったとも言われるが、詳細は不明である。

一部の識者の見解によれば、テラ・ツー戦役(※3)は計画された騒乱であり、火星搾取による不満を「独立」への渇望へ向かわせる事により、火星の採掘場を基盤にしていた企業お抱えの政治家を失脚させるのが目的であったとも言われる。

これは旧世紀から連綿と語り継がれる陰謀論の延長でしかないが、事実、テラ・ツー戦役を境に、火星企業を基盤にしていた政治勢力は減衰し、変わって地球至上主義ともとれる軍部シンパ、あるいはシャニアテック社などの軍需メーカー基盤の政治家が多く台頭する事なった。

なお、陰謀論者の主張によれば、中継ステーションの連続襲撃事件についても、合法的に宇宙戦力の増加と、俗に《蜘蛛の糸》と呼ばれる諜報機関(めいた組織)の設立を目的にした連合宇宙軍の自作自演ではないか、とも言われているが、これについて連合宇宙軍は公式に否定発表をしている。

(宇宙暦312年 テラ・ペーパー記者 リュウ・エンドゥの火星独立に関する記事より一部抜粋)




                          用語説明


※1 シャニアテック社

地球圏最大の宇宙兵器専門の軍需企業。

宇宙の戦闘艦船、機動兵器コンバットアーマーの生産に於いて、他の企業を遥かに凌ぐ技術力と生産力を誇る巨大複合企業メガ・コングリマリットとして知られる。

地球連合政府議会にも幾人モノ議員を送り込んでおり、地球連合宇宙軍との癒着が度々問題視されている。

また人類で唯一、重力制御機関「GR機関」を設計開発できる企業であり、ハイヴィスカス戦役で活躍した実験戦艦シルフィードもシャニアテック社が建造した。



※2 ゼノ・シールス

ハイヴィスカス戦役の英雄。

地球連合宇宙軍の事実上のトップ。

類まれな指導力と軍事構想を持つ、時代の寵児として知られる生ける英雄。



※3 テラ・ツー戦役

約一年間続いた火星独立戦争。

レカル・フォルテーナ率いる火星解放戦線(MTA)が、火星首都ティーグと火星環境管理システム『Lily』を制圧し、独立を宣言したのを契機に火星全土で一斉に反地球勢力が蜂起した。

地球連合宇宙軍(UES)は鎮圧部隊を派遣するが同時期、金星軍による各地での襲撃事件が相次ぎ、圧倒的戦力を送り込む事ができず、長期戦と化した。戦力的に劣るMTAであったが、火星解放軍特殊機動大隊の活躍と、反地球連合勢力からの援助により戦い抜いた。

金星大艦隊の地球来襲(第二次ハイヴィスカス戦争)によって、地球連合政府はMTAとの戦争に割く余裕がなくなり、政治的経済的理由から、火星独立を承認した。


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