2話 クラス
「ちょおっ」
「え?なに?」
「い、いや、ちちょこれーと」
「食べたいの?いきなり?」
「たぶん?」
「急だな。いるか?」
持ってんだりゅうさん。
ツッコみそうになったよぉ。…ありがたく受け取るけどね。
しかし驚いた。
クラス分け掲示板。
それは誰と同じクラスなのか誰が担任なのか分かるこの後の命運を握るやつだ。
望みは一つ。主人公と同じクラスだけは勘弁!!
モブ主人公にしろ本物主人公にしろ基本はどっちも良くも悪くもよく目立つし。一緒にいたらそれだけで巻き込まれちゃうからね。
でも、名前が思い出せないからこの掲示板の名前500人の中から見つけるのは無理かなとか思ってたんだけど。
はっ。杞憂でした。
見つけたわ。主人公…あ、本物のヒロインの方。
ーーー桜輝ひめか
間違いない、彼女だ。
しかも桜輝って。すごい名前だ。なんか神々しいし。前世の『わたし』もまったく同じこと思ったに違いない。
わあ、ヒロインっぽい名前。
…って。
でも、肝心のモブ主人公の方はな~うーん、分からん。
やっぱり思い出せない。なんでだろう。
でも心配ないかな。
だって私、本物ヒロインと同じクラスだし。はは。
ゲームといっしょならモブ主人公も本物ヒロインときっと同じクラスだし。ははは。
はははは…ぐすっ。
泣いてないから。嬉し涙だから。きっと、ヒロインの周りにはそりゃたくさんのイケメンが集結すると思うし。うんうん。当初の目的は達成ジャン。
…死と隣り合わせだけど。
「何してんのお?教室に行くわよ。」
「おぉ」
ぐいっとまた引っ張られる。今日はよく引っ張るね、みんな。
ちょっとくせっ毛のしぃの髪が目の前を揺れて鼻が少し、くすぐったい。見上げれば高いところに結んだポにーテールがゆらゆら揺れてた。日の光のせいかな。黄色の髪がちょっとオレンジ色に見えて綺麗。
あ。
「しぃはクラスどこ?」
「…掲示板見たじゃない。」
「確かに見た。あ、同じクラス?」
「だから同じ教室に向かってんでしょ」
え、そうなんだ。やったぁ。
「あのねぇ。・・・はぁ。私だけじゃなくてトモとシュイナも一緒よ」
あ、やっぱり?…ともちゃんは良いとしても、シュイナはそうだろう。だって攻略対象だし。
あ、でも隠れキャラだったな確か。
…シュイナが隠れキャラかぁ。攻略対象だし。
あぁ!あおいちゃんも攻略対象だ。あっちは隠れてないけど。
二人共タイプは違うけど、確かにイケメンさんだったからな。
たしかー、本物主人公とあおいちゃんは同じクラス委員という立場として接点を持つはずだったから、モブ主人公は…ん?ちょっと待って。今更だけど、そしたら私モブだけど、攻略対象の幼馴染じゃん!
あ、でも、ともちゃんとしぃもそしたら同じか。あ、じゃあ大丈夫かな。
「でもすごいね!長馴染みが3人とも同じクラスって!」
「そうなるかとは思ってたわよ。私は。」
「そうなんだー。しぃはエスパー?」
「んなわけ無いでしょ。ここがどんなトコで、しかもこんだけ新入生が多いんだから、どうやってクラス分けするかは何となく分かるでしょ?!」
「へぇ」
「…そこに興味ないのね」
まあ、あんまり。結局、一番避けたいと思ったモブ&本物主人公と同じクラスだし。
どうしてかなんて今更知っても。以前から知ってても対策なんて打てなかっただろうし。
なんせ思い出したのはさっきだから、今更だよね。
「ついた。席は何処かしらね」
と言って足を止めたしぃを見たあと上を見上げれば、[Aクラス]の板がブランっと掛かっていた。
たしか、1学年がA~Jまで・・・あったかな?確かゲーム通りなら、2学年がⅠ~Ⅺ・・・だったような~・・・で、3学年の最高学年はクラスがないんだよねぇ。
まあ、確かに3年生ってもう半分位は自由登校になってたからクラスはいらないのかも。
しいて上げるなら「魔法学」「光化学」「実践学」・・・の3つくらいだったような。
「まあ、今日は自己紹介くらいしかしないからきっと早いわよ。」
いやいや!それが一番今日の私にとって重要なんだよ!
「終わったら皆でお昼ご飯食べましょう!!」
「…そうだね~」
あ、そうか。
まだ昼前なんだよね。もう一日が終わったの?ってくらい気持ち的には疲労してるんだけど。
ご無沙汰です。見て頂いてありがとうございます。