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1話 移動と噴水と

確かに憧れてた。


前世の『わたし』にとってイケメンなんてのは画面の中の存在だったから。

会うことも話すこともない、存在。

見ることなら見てみたい。話せるなら話したいじゃない、ーーーそう思ってた。

いやぁ乙女思考だったんだね。

とにかくすごく憧れた。

そう思うのは誰だって自由だと思うのよ。


***


あたま、頭を整理したい。……アンドちょっと座りたい。


いくら理解していたところでやっぱり混乱はしているわけで、座るどころか出来たら寝室で横になっていやまあ、横になっても、全く何も変わらないのは分かってるけど、ちょっと自分に酔ってみたいっていうか。

いやとんかく整理したい、分かっちゃいるけどそうしたい。




なーんで立ったままなんだろう。足痛い。

見上げればはるかに高い天井に少しくらっとする。


教壇に立つ人は次々変わるし、しかも話は長い。入学式、教壇、先生とくれば話が長いというのはセオリーなのかもしれないけれど。


もーさ、入学おめでとーの一言でいいじゃん。

ぶつくさ心の中で言い舌打ちしながら何気なく周りに視線をよこして、ふと思った。


そーいえば、主人公もこの会場のどっかにいるはずなんだよね?


どっちの?

いや、モブ主人公か。このゲームの真の主人公は彼女なんだから。

あはは、一人で突っ込んじゃったよ。

このゲームは、彼女の動き方、発言で物語は基本動く。つまり、私の学園生活がハッピーなものになるかは彼女次第と言ってもいい。じいぃっくり観察しなくてはいけない。


でも、本物の主人公の方が絶対に早く見つかりそうだ。

だって彼女はきっと目立つから結構簡単に見つかると思うんだけどーーー。


あ、うん。

いや、わかんないや。

そもそもこんな大勢の中から見つける方が困難だ。

第一、背低いからあんまり周りが見えないし。でも、一応首振って見渡しては見たよ。いやぁ、人が多い。しかも首痛い。

ってかホントいつまで立ってればいいんだろーか。廊下。ぷぷ、ああ違う、いや足痛い。


でもすごい、こんな一瞬で目に付くイケメンさんは3人もいた―――!うんうん、さすがだよこの学園は。

さすがだよこの高校は保養だ保養。ふふふ、じっくり見ておかないと。

新入生だけで500人以上いるらしいから、探せばもっといるかも。

首振り以上のことはちょっと怪しまれそうだし目立ちそうだから出来なそうだけど・・・いやいやいやそうじゃなかった。


「新入生の皆さんはこちらです」


「え。」


綺麗に透き通る声。会場に凛と響くこの声はには聞き覚えがある。

どこでだっただろう。……あれ、その声の主様よ、新入生はどこって言いました?

おお、周りが動き出したぞ。着いてけばいいかな。


うーん、立ちっぱなしだったから足が痛いぃ・・・。

足首をコキコキ曲げて動かしてると手を後方にぐいっと引っ張られた。それで崩しそうになった体は少し角ばった手に腰を支えられ難を逃れる。


「なにしてんの?」


ちょっと不機嫌な声音は彼のセオリーだ。

・・・あおいちゃん貴方、攻略対象だったのね。これから大変だねぇ。

でも納得。あおいちゃんだけでなく、みんながどこか綺麗で雰囲気が違ったもんね。

めっちゃ田舎なのになのに綺麗でかわなのいいし。きっとこの先の人生で何か起こりそうな幼馴染達だなとそこそこ思っていたそこそこ鋭い自分に若干の称賛を送ろう。いままで不思議に思っていた事は前世と乙ゲーという答えによって納得した。


彼等は攻略対象者であり。高位モブであった。

あ、要はモブ主人公と何らかのイベントなどの時にそれなりに関わって役に立つモブたちの事です。

いやあ鼻が高い。私は只のモブだけど。


「外に移動だって。聞いてなかったの?」

「うん、聞いてなかった。で、あおちゃん。どうしてここに?」

「そんな自信満々に答えないでくれる?嫌な予感したから来て正解だったね」


……助けられないけど、遠くから、うん、遠くから応援してるから!!

どこか不機嫌そうにぐいぐいと私を引っ張りながら歩く目の前の人物にちょっと同情してれば彼がくるっとこっちに視線をよこした。

ああもう心配症。

これって癖なのかな?

引っ張ってるのに、しっかり付いてきてるのか心配で時々振り向き様子を見て歩く、彼はとても心配性な、優しい私の幼馴染です。





ぴゅう。

おお、外に出ちゃったよ。ちょっと寒いかも。もう暖かい季節だとは思うんだけどなぁ。

最近、ちょっとまだ肌寒いっていうか。あと一枚くらい羽織って出てくればよかったかも。あの子にもそう言われてたしなぁ。心配そうに黒のカーディガン手渡してくれたのに、ベッドにかけ忘れた今朝の自分に怒りたい。


しかし多いな人が。やっぱりすごいこの学園。

国が誇るのも頷ける、私はイケメンオンリーでの入学だけど普通は将来設計の為に血反吐吐いて入学する人が殆どだろう。何せ生徒の大半はどこぞの貴族だの社長子息令嬢だのがいっぱいだもんね。選ばれるかは別として、より取り見取りだし。


しかしやっぱ多いな。

混雑ってこんな感じかな。なんか前世の満員電車前の駅のホームを思い出すんだけど。

まあここは、ホームじゃなくて広場みたいだけどね。そこかしこに白いベンチもあるし真ん中にはおっきな噴水もあるっぽいから多分、広場。

でも、人が多すぎて噴水はよく見えない。残念。

見た事ないんだよね、噴水。前世ではあるけど、今世ではまだ絵止まり。

海とかレベルで見てみたいものベスト30に入るくらいには、ウン。ちょっと見てみたいなー。

もちろん一位はイケメンですよ、当たり前じゃないの。いやでも副生徒会長とか生徒会とかレベルになっちゃうと否応でも物語に組み込まれてしかも簡単に死亡フラグを獲得しそうだからな。


ちょっと遠くから眺めるだけでも彼らなら絶対に気付いちゃって変なボタン押して興味持たれるのは物凄く遠慮したい。


え?幼馴染達は良いのかって?彼らは私にとってはすでに特別枠なのでそこは別の事柄なんだよね。


ちらりと噴水方面に目をやる。

あーでも、今は無理かな。そもそもあそこまでたどり着くのに時間かかりそうだし。

人がいない方が見やすそうだし、うーん、夜とか?


「はーちゃん」

「え?」

「危ないからダメだよ。まっすぐ家に帰んなさいね」

「え?」

「噴水、見に来るつもりなんでしょ」


ちょっとあおいちゃん?もしかしてエスパーですか?

勝手に読まないでよ人の心を。


「そんな特殊能力持ってるわけないでしょ。まったく。」


ああ、そうっすか。そりゃそうだよねエスパーだったね。

ほらこっち、とまた引っ張られていく。

だからね、早いんだって。結局、噴水だってちらっと、ちらっとしか見えなかったじゃん。でもそんなちらっとだけしか見えなかった噴水に座る男性が。これまたちらっと見えた。

足を組んで読書の最中なのかな。いや、よくは見えないけど。

ちょっと寒い中で、こんな混んでるとこでわざわざ読書ですか。ふふふ、こりゃ変人か、イケメンの二択だ!

でも残念。顔までは見えなかったよーん。

でもあの噴水は気になるから、後でちょこっと……


「はーちゃん」

「いや来ないよ。来ない!来ません。来るつもりはミジンコほどもない!」


待って。

何かな。そのミジンコほども信じてません的な目は。

そんな綺麗な紫色のの目で見ないで。睨まないでって。まつげだってバッサバサのあおいちゃんだと何か女王様みたいになっちゃうから。


「お、いたいた!」


あ、このおっきい声は。

あおいちゃん越しに顔を出して見て見れば思った通りの人物がこちっちに向かってに手を振った。走ってるからかな目立っつな~。効果音つけたら多分ドスンドスンって感じかだろうな。

いやそこまで重くないか、トスン、トスンくらいだ。

あ、ちょっと汗かいてる。

あおいちゃんは、呆れたような眼差しを向けて話し出す。


「やっぱそのつもりだったんだね皆。」

「そう言うなって。誰かがそうなるんだから。今回は葵が一番近かったんだからさ。」

「ははは」

「乾いた笑い出すなよ。みんな待ってるから行こう。ほらこっち。」


くいっ。今度はりゅうさんに引っ張られ歩く。しかも、歩幅は合わせてくれてるらしくゆっくり。ジェントルマンだー、りゅうさん。

でも何なのかな、この幼馴染方は。

いつも思うんだけど、これって多分いや間違いなく方向音痴な私を心配してるからだろうけど、何か子ども扱いぽくもあるよねえ。

まあ、お蔭でしっかりと目的地には迷わずたどり着けるので意義はないし感謝もしてるよ。恥ずかしいだけで。


そんなことを思いながら何となく、ちらっと振り向けばあおいちゃんにジトリ睨まれた。


「ダメだからね。」

「……もちろんわかってるよ?」

「何の話?」


歩きながら振り向いてりゅうさんが首をかしげた。

あとで話すから、とため息混じりに答えたあおいちゃんに苦笑しながら私を見る。

とりあえず首振ってみるとさらに笑われた。


「その話は、とりあえず合流してからだな。多分もういると思うから。」

「早いね~」

「そ~か~。そう思うか~。」

「はーちゃん、ボーとしてたからね。またイケメン探してたんでしょ」

「すごいねーここ。ちょと見ただけでも結構いるよ。まだ6人くらいしか目星ついてないけど!しっかりじっくり探していけばもっともぉ~と見つかるはずなんだよ。やっぱかっこいいい人ってのは目の保養だよね、保養。」

「変わんないな~葉月。ブレないな~ほんとに。」


若干呆れながら流したねりゅうさん!

あおいちゃんは無視だし。


「え?ちょっとどのあたりにいるわけ?見当たんないんだけど。」

「もう少しだよ。ほらあそこのクラス分け掲示板の前・・・正面よりかはちょい右。」


りゅうさんがずいっと指す先に見えたのはおっきい板。でっか~。


待てよ。クラス分け。


傍と気づく。

そうだよ。それ見れば分かるじゃん。主人公がどこにいるか!

や、モブ主人公の方?

でも、本物主人公、本物ヒロインの方も知ってたほうが良いかな。


うーんややこしい。

そもそもどちらもしっかり把握しといた方がいい気がしてきた。


いやでもさちょっと待って。こんなかから探すの!?

確か新入生500人。

無理、いや無理。



そもそも主人公の名前は何だったけ。




ご無沙汰ですが、よろしくお願いします('◇')ゞ

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