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5 ゲーム世界へ

 相変わらずこの部屋は外同様に暑い。

 今日は17日、ということは、業者は明日まで休みか。まったく、今時は何でも年中無休のご時世じゃないのかよ。


 暑さにイライラしながらも、俺はとりあえずパッケージを開けることにした。


「『リアル・ラブモーション!ぎゅーっと!』ねぇ……」


 車で帰ってくるほんの短い間にスマホで調べたが、驚くほど何の情報も出てこなかった。あの店員が言っていたことは本当だったのか。


 ディスクを取り出すべく、女の子たちには目もくれずにプラスチックっぽいパッケージを開いた。

 ちなみに説明書は読まない。

 どれも殆ど同じような操作方法だし、俺は分からないことが出てきたらその都度読む派なのだ。

 習うより慣れよ、まずはやってみないと。


 黒い携帯型ゲーム機にディスクを入れ、起動する。


 『セーブデータを作成しています……』という表示が出てくるくるとハートが回っている間、画面の下あたりではデフォルメされた攻略キャラたちがちょこまかと動いている。

 店でパッケージ見た時も思ったけど、どの子もかわいいんだよなぁ。


『完了しました。彼女たちとの生活を楽しんでくださいね! まずはあなたのことを教えてください!』


 はいはい。まずは……


『夜野裕樹、6月22日生まれ、A型』


 ん? 血液型も入れるのか。会話要素に血液型が関係してくるような場面があるんだろうな。


 次は……キャラメイク?!

 え、もしかしてこれネトゲ的な感じ?



 ………よし、出来た。

 思いのほか細かく設定出来たからゲームの中でくらいイケメンでもいいかなぁと思って1度美少年を作ったんだけど、落ち着かなくて結局自分の特徴を押さえたそこそこイケメンを作った。

 現実の俺もそんなに悪くないと思うけどね。告白されたこともあるし、バレンタインにはチョコも貰う。ただ性格というか、趣味に問題があるのだ。

 でも、やっぱりゲームはやめられない。

 ヒモになりたいという願いを叶えてくれる女性がいつか俺を好きになってくれると信じて生きている。


 俺は決定を押して、キャラメイクを再確認した。

 黒髪、キリッと程良く整った顔立ち、少しだけ筋肉のついた細い身体。

 ……これは完璧だろ! イケメン過ぎないけどイケメンの部類!


『あなたは“この人”になって女の子たちと過ごします。設定は変更できません、よろしいですか?』


 むしろ考えに考えたこのキャラメイクを変更したくない。


 俺は迷わず『はい』を選んだ。


『それでは、行ってらっしゃい!』


 やっと始まる。

 そう思いながらSTARTボタンを押した……と、同時に画面が異常に白く発光した。


「うわっ! 眩しい!!」


 あまりの光に俺はゲームを離して目を防ぐ。


「なんだ? まさか故障か?」

「何の話ですか?」

「え?」


 なんだ? いま知らない声が聞こえたような……


「どうしたの?」


 まただ。やばい、幻聴が聞こえる。あの光は何か見ちゃいけないものだったか。

 うわぁ、どうしよう。目を開けるのが怖い。


「さっさと行こうよー」

「あっ、待ってよぉ! 裕樹くんも行こう?」


 声がたくさん聞こえる。わけわかんない、もう泣きたい。何で俺の名前知ってんの? ていうか、誰が喋ってんの?


 俺は意を決してそっと目を開けた。


 そこには、俺の学校とは違う制服を着た女の子たちが4人。全員が俺を見ていた。俺もきょろきょろと全員を見た。

 何で俺、外にいるの? ここどこ? ゲームは? 部屋は? この涼しさは何?

 一気に疑問が頭いっぱいに浮かぶ。

 なんだろう、知らない制服なのに見覚えがある気がする……それに、この女の子たちも。


「どうしたの? きょとんとして」

「いや……」

「あー! もしかして緊張してるの? 入学式だもんねぇ、私もドキドキ!」


 入学式? いま夏休みだけど。


「早く行かないと遅刻しますよ!」

「あっ、うん!」


 この子たち、やっぱり見たことある。

 えーっと…………



「あああっ!! ゲームの!!!」

「わっ、どうしたの? 急に叫んだりして……」

「あ、ああ、ごめん! 何でもない!」


 この女の子たちはあのゲームのパッケージにいた4人だ!! 間違いない。

 それにしても、何で俺の目の前にいるんだ?

 だってこれゲームだろ? あり得ない。リアル過ぎる。


『あなたは“この人”になって女の子たちと過ごします』


 そんな注意文が頭を過った。

 まさか……


「なぁ、鏡持ってない?」


 とりあえず1番しっかりしてそうな黒髪ポニーテールの女の子に聞いてみた。


「鏡? 持ってるよ。はい」

「ありがと」


 差し出された鏡を受け取り、恐る恐る覗く。


 そこにいたのは、ついさっき俺が作った(・・・)『夜野裕樹』だった。


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