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 メールだといつ返信来るか分かんないし、ここは電話するしかないな。

 番号知ってるゲーム友達なんて3人しかいないけど、そいつらに片っ端から掛けていけば誰かしら泊めてくれるだろう。



「ごめん、いま婆ちゃんのとこ来てるから」

「あー、そうだよな。長崎だっけ? お土産はカステラでいいよ」



「いま? 家族旅行中で北海道なんだ」

「そういえば行くって言ってたっけ。毛ガニ食いたいな」



「裕から電話がくるなんて、明日は雪だな! でも明日からキャンプだから泊められないんだわ、ごめん!」

「キャンプなのに雪でいいのか」



 ……無理だった。

 なんだよ! みんないないのかよ!

 予定なんて何もないのは俺だけだったのか。裏切られた気分だ、まったく。


 だけど、みんないないならどうしようもないな。

 とりあえず入れたアイスティーを飲もう。ガムシロ、ガムシロ……あれ、ガムシロどこだっけ。母さーん。



 ……そんなわけで、仕方なくこの空調の壊れた暑い部屋で過ごすことになってしまったのだ。


 そういえば今更だけど、みんなただのゲーマーと見せかけて意外とアクティブだったんだな。

 百歩譲って、親戚の家と家族旅行はいいとしよう。でも、キャンプって何だよ。その単語すら中学校の行事以来聞いてこなかったんだけど。


キャンプだほい

キャンプだほい

キャンプだほいほいほーい


 ……はっ!

 すっかりキャンプの儀式用唱歌に取り憑かれていた!

 いまだにはっきりと覚えてるなんて、中毒性ありすぎて怖いわ。



 それにしても。


「あっつい……」


 いまがちょうど最高潮に暑い時間帯とはいえ毎日毎日こうも暑いようだと、もう俺は駄目かもしれない。

 異常気象だ、猛暑だ、熱帯夜だ、とネットのニューストピックスにも連日上がっている。蒸し暑くサウナのようなこの国の夏を何度恨んだことだろう。

 パソコンもゲーム機も熱を持ってしまって、今にもショートしてしまいそうだ。


 タオルケットだけを掛け布団にして寝っころがっていたベッドからようやく起き上がり、テレビゲーム用にしてある左のテレビモニターの前に座る。

 最近やっていたRPGは寝る前に終わってしまった。正しく言うなら昨日は、クリアしたから寝た。あれは何時頃だったんだ?

 二人組で古城に侵入し伝説の宝物を取って帰ってくるという何ともシンプルなテーマだったけれど、道中のバトル要素や二人組の男女選択で会話ルートを変えることができたりとなかなかにやり込めたので達成感というか、満足感で充たされていた。

 しかし、それも終わってしまった。

 ゲームには必ず終わりがある。何度も初めからやり直すこともできるし、日常系なら根気よく続ければいい。だけど、提示されるミッションには限界があり、いつか必ずクリアという終わりがくるのだ。卓上ではないこの“人生ゲーム”ですらいつか終わりがくるのだから、リセットボタンがあるおかげでやり直すことが出来るうえに素敵なラストや心揺るがす分岐が多数用意されている電子の世界は正直羨ましい。


 二次元に行きたい。

 そんなの絶対に叶わないと分かっているのに、その世界に魅了された人間たちはそれを願わずにはいられない。ほんと、どうかしてるよ。俺はゲームが“リアル”ではないことくらい、割り切っている。そうでなければ生きていくことがつらくて仕方ない。

 終わってしまったのなら、また新しいゲームを探さなくては。


「また中古漁るか……っても、スルメなのは入ってなさそうだよなぁ」


 この暑さ。戦利品を手に入れられる保証もないのに外へ出るのは少々気が引けた。けれど、家に居てもゲームは舞い降りてこない。



 軽く身支度を済ませて、いざ、外という名の戦場へ。

 夜野裕樹(やのゆうき)、行きますっ!


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