言葉の壁
彼は困惑していた。
未知の転送システムで跳ばされた先では動物兵器制御ネットワークから切断されてしまったからだ。これではマスターに連絡を取ることも現在地を探ることもできない。どころか周辺を見回すと機械設備が全く見当たらないのだ。
彼のいた世界では照明や家電製品、その他ありとあらゆる機械はネットワークと繋がっている。電脳世界は視覚化され、一部のナチュラリストを除いてネットワークは意識で繋がるものだった。
それを切断されるとは携帯電話をなくして片目をふさがれるような状況であった。
目の前にいる生物が何か話しかけてきた
「犬? よね?」
どうやら相手は言語発音の声帯を持っているようだ。現在の自分の装備はオプションは全てパージしており、内蔵火器も空間圧縮しており見た目には金属部分が手足と胴回りにあるものの基本的には犬にみえた。
「あなた、私の言葉わかる?」
相手は意志の疎通を図っているようだか彼は警戒していた。二足歩行の猫である。自分のデータにない知性体なのか、それとも動物兵器の一種か、内蔵センサーで相手を探る。
「!! ぅぅうーー。」
彼は警戒のレベルを引き上げた。サイキックセンサーに反応があったからだ。
「警戒されてる… たぶん言葉はつうじてるよね。良いですか?あなたは 私に 召喚 されました。 分かりますか?」
召喚というのは一瞬わからなかったが確か目上の人や裁判所などに呼び出されることだったはずた。
「あなたは 私の 召喚獣として たたかうの。いい?」
なるほど。召喚獣というのはよくわからんがつまりは自分の力が必要だと言うことか。
ならは仕方がない。メンテナンスされなければ十全に戦えない以上新しいマスターにしたがわざるを得ないからな。
彼は了解のメッセージを相手が持っているであろう端末に送ろうとしたがネットワークに繋がっていないことを思い出した。そして自分に発音声帯はない。仕方なく地面に前足を使って(契約する)と書いた。だが
「えっと… 何てよむのこれ?」
銀河共通言語が通じていなかった。
「…わぁう?」
なぜ話は分かるのに文字はわからんのだろう。
二人の獣は途方にくれるのだった。
翻訳魔法は声帯のないものを喋らせることはできません。