猫の魔法使い
猫サイド
人族と亜人・獣族連合の戦争が始まってから三年、状況は拮抗していた。
数と魔法の汎用性に優れた人族に対し、さまざまな種族特性を持つ亜人と獣人は一進一退の戦いを続けている。
そんな状況の中、人族が打開策として打ち出したのが召喚魔法「勇者召喚」であった。
従来の人族の力を大幅に上回る彼の出現に亜人の領土は一つ、また一つと奪われていった。
そこで対抗策として亜人獣人連合でも勇者か、それに準ずるものを召喚することになった。
エルフは精霊王を、リザードマンやサハギンたちは竜を呼ぶことに成功したが、獣人は基本的に身体能力に優れたものが多く、魔法を使うものが少なかった。
しかし全くない訳ではなく、一部の氏族では魔法使いも存在した。
猫の獣人ケットシー。その中で当代きっての魔法使いと呼ばれる猫が魔女キャシーである。ケットシー族の長である祖母キャナルより「英雄の獣」を召喚すべし。との命をうけ、儀式に取り掛かっていた。
「術式構築・言語翻訳・反逆不能・世界壁魔力吸収……こんなところかな。」
祭壇を組み、供物を捧げ、魔方陣を描き、魔力を注ぐ。術の内容はともかく作業事態はシンプルな召喚術である。もっとも術式の内容が複雑で、ケットシー魔法に他の種族魔法を混ぜこんだ内容なのだが、それを苦もなく構築していく。
「よーし。仕上げといくわよー「獣の中の獣、守護者にして破壊者たる最強の獣、我が声が届くなら、我が魔力が届くなら、呼びかけに応じたまえ。」」
手応えがない。強ければ何でもいいとする内容が対象を絞り込めていない?ならば
「世界の果て、戦場を駆け抜け、数多の心無き者を打ち倒し、自軍に勝利をもたらす戦場を覇者、この地に来たりて戦場を平らげに来い、来い、来い。」
やがて魔方陣の輝きが強くなる。巨大な魔獣が来る想定で、体育館ほどの広さの儀式場を使っていたのだが、そこに現れたのは一匹の
「犬? よね?」
果たしてこれに需要はあるのか?