ヤンデレ彼女と朝ご飯
彩乃はまだです。
コッケコッコー!
俺の家の鶏の鳴き声で目が覚める。
うん? なんだろう? なんか妙に暖かくて、妙に柔らかくて気持ちいい……。
「っておい!」
「あれ? 雪君起きちゃった?」
柔らかい感触はさゆりの体で、俺に覆いかぶさっている。
「いいからどいてくれ! 俺は襲われたい趣味とかないし!」
「わたしじゃダメなの?」
「その通り!」
「そんな雪君なんていらない!」
スカッ!
俺の頬にカッターが掠る。
「え、えっと……、ど、どういうことですか?」
「わたしね、反省したんだよ? 死んだらダメだって。だからね、雪君に代わりになってもらおうと思って」
「俺に死ねと?」
「雪君が言うことを聞いてくれれば、こんな事しなくて済むんだよ?」
「せめて言葉の自由だけは認めさせてください!」
「うん、いいよ」
「さゆりなんて嫌いだ!」
「雪君のバカァ!」
俺の首元にカッターが。
「だー! わ、分かったよ! 俺はさゆりが好きです! 大好きです!」
「うん! わたしも雪君のこと大好きだよ♪」
余計に悪化してしまったな……。はぁ、死にたくないなぁ……。
「それでね、雪君!」
「ん?」
「今日はわたしが朝ご飯を作ったから、いっぱい食べてね!」
うむ、さゆりのことだ。どんなゲテモノ料理が出てくることやら……。
そして、さゆりが俺にべったりとくっついたままに、一緒にリビングへと向かう。
すると、なんとも言えない食欲をそそる香りが漂ってくる。
「お! 良い匂いがする!」
「えへへ~、わたしが腕によりをかけて作ったからね!」
テーブルを見ると、どこの高級レストランのバイキングですか? と言うくらいに、美味しそうな料理が並んでいた。
「さゆりさんの料理美味しそうだよね! あたしも食べたい!」
「勿論食べていいんですよ。そのために作ったんですから」
「うん! 俺もなんか腹減ってきたし食うかな!」
「あ、雪君はこっちだよ」
「へ?」
そう言ってさゆりはキッチンの方から別の皿を持ってくる。さゆりの持ってきた皿を見てみる。もの凄く赤黒い。なんなんだ!? この物体Xは……?
「あ、これはね~、わたしの血液を使った、ロールキャベツだよ♪」
「はい!?」
「あ、心配しなくても手首は切ってないから大丈夫だよ。ちゃんと、注射器で吸い取ったものだから」
いや!? 切ってる切ってないとかじゃなくてさ! 自分の血液を料理の中に入れること自体、おかしくない!?
「お兄ちゃん! さゆりさんの気持ちが詰まってるんだから、絶対に残しちゃだめだよ!?」
そして、春からの追い打ち。食べるしかないのだろうか……?
「雪君! わたしがちゃんと、あーんってしてあげるからね」
「お前のあーんなどいらん!」
「なら」
「わ、分かった分かった! 食います! 食べますから! その物騒なものをしまってくれ!」
意を決して、一口食べてみる……。
うん……。鉄の味だ……。
「どう? 美味しい?」
「え、えっと……」
「美味しくないの……?」
俺が言葉に詰まってしまい、さゆりは涙目に。
「お兄ちゃん!」
「い、いや! 違う! う、美味い! 美味いよ! な、なんと言うか、そ、そう! 頭が良くなりそうな味だよなぁ……。なんて……」
「良かった~、美味しくなかったらどうしようかと思ったよ~」
明らかに美味しくないって伝わるはずなのに、何故か俺の言葉を信じちゃうさゆり。
はぁ、でもこれ以上は、逆らっても逆らわなくても生命が持たない気がする……。
「まだ沢山あるからいっぱい食べてね~♪」
「は、はは……」
今度こそ彩乃出る予定