ヤンデレ彼女と俺の家
二話目。書きうま。
「でだ」
「うん! 何かな? 雪君♪」
「何で着いてくるんだよ!?」
「だって、わたしは雪君の彼女だし」
「お試し期間って言わなかったか?」
「お試しでも恋人は恋人だよ!」
はあ、さゆりといると変な感じに疲れるな・・・・・・。
そんな事を思っていると、俺の家が見えてきた。
「お! 雪君の家だね!」
「へ? なんで知ってるんだ?」
「ふっふ~! 雪君の情報は、この! 『雪君ブック』に全部載っているんだよ!」
なんか恐ろしいものを出してきたな。しかしもう家だ。とっとと帰ってもらう事にしよう。
「さゆり、じゃあな」
「うん!」
別れのあいさつをして家に入る。はぁ……。
「ただいま……」
「おかえりなさい雪……って!?」
「おかえりお兄ちゃん……って!?」
「どうしたんだよ? 二人して変な声出して」
「だって、雪が彩乃ちゃん以外に女の子を連れてくるなんて初めてだから」
「うんうん! なんでこんなに可愛い子がお兄ちゃんに寄ってくるの!?」
まさか!?
振り向くと、さゆりが扉の隙間から、ちょこんと顔を出していた。
「え、えっと……」
俺が戸惑っていると、さゆりは家に入ってくる。
「わたしは雪君の彼女のさゆりです! 末永くよろしくお願いします!」
おい! その挨拶の仕方は間違ってるぞ!
大体まだ、お試し期間だって言ったのに!
「あらあら、ご丁寧に。私は、雪の母の、千穂よ。よろしくね」
「あたしは雪お兄ちゃんの妹の、春だよ! よろしく!」
「千穂さんに春ちゃん。よろしくお願いします!」
うん。なんか仲良くなる方向に向かってるよね?
「と、とにかく、今日は遅いから帰ってくれ」
「もう! 何言ってるの! せっかく来てもらったんだから、ご飯ぐらい食べていってもらわないと!」
「そうだよ! お兄ちゃんのバカチン!」
「やった~! 雪君の家でご飯ご飯♪」
え!? 恋人になった以上、家が癒しの空間だと思ってたのに!
「もしかして、さゆりちゃんに帰ってほしいわけじゃないわよね?」
「さゆりさんをいじめちゃだめだよ!」
そうやって不機嫌そうに、二人は俺を睨んでいる。
「わ、分かったよ……。ただし! 今日だけだからな!」
そう釘を打って、家に上がろうとすると、さゆりが口を開く。
「実はわたし、親から虐待を受けているんです……。もう、あんな場所に帰りたくないんです……」
何を言い出すんだ!? これは精神的攻撃だ! 母さん! 騙されてはいけないぞ!
「あらあら……。そうなの? じゃあ、ずっとうちにいなさい」
「いいんですか!?」
「当然じゃない! 雪の彼女は私の家族同然よ!」
まじか……。さすが母さん、簡単に信じてしまった。うん。さゆりの言っていることは絶対嘘だ……よな?
「さゆり、嘘だよな?」
「本当だよ?」
で、当たり前のようにみんなで食卓に。
「ほら、今日の晩ご飯はおでんよ!」
夏なのにおでん。うん、通だね。というか、ここ最近毎日おでんなわけだが・・・・・・。
おでんなんて食べる気がしないので、ただ、じーっと座ってると、さゆりが俺を気にかけてくる。
「雪君! 全然進んでないよ!? 取ってあげるから! どれが好きなの?」
「えーっと……卵?」
「うん! 卵だね、待ってて」
そう言って、さゆりは鍋の卵を全部俺の皿に入れる。
盛りすぎて皿から溢れそうなんだが・・・・・・。
「あの……」
「どうかしたの?」
「こんなに食えないんだけど……」
「わたしの取ってあげた料理が食べれないんだ……」
そしてさゆりは涙目に。
「お兄ちゃん! さゆりさんをいじめるなって言ったよね!? 全部食べないと、ラリアット食らわせるからね!」
「はは……」
結局、ラリアットが怖かったので、無理して卵を全部積め込んだ。
だって春のラリアットもの凄く痛いんだもん……。
そして俺の部屋に戻る。勿論さゆりも一緒だ。
「はぁ、疲れたな……」
俺の一言に反応して、さゆりは楽しそうに提案する。
「ねぇ雪君! 疲れた時はお風呂が一番だよ!」
「ああ、そうだな、じゃあ行ってくる」
「うん!」
そういうわけで、着替えを準備し、さゆりを置いて風呂に向かう。
脱衣所に着き、服を脱ぐ。そして風呂場に入り、頭から洗うことにする。
髪にシャワーのお湯をかけてから、シャンプーを手にとり、頭を優しくごしごしと洗う。
……と。
「ゆーきくんっ♪」
「げ!?」
いきなり扉が開いて、タオルすら身につけていない裸のさゆりが、躊躇なく入ってくる。
「な、なな、なんで入ってくるんだよ!? っていうかなんでタオルすら身につけてないの!?
の前に、成長過程にある男女が一緒に風呂って明らかに間違ってるよね!?」
「も~、質問が多いよ~。どれか一つに絞ってよ」
「じゃあ、なんで入ってきたんですか!?」
「雪君の彼女だから♪」
そう言って恥ずかしそうに笑うさゆり。でもそれ以上にさゆりの白い肌が綺麗で、裸だとさらに際立って……って!
「だー! 男は猛獣なんだぞ! いつ襲われる分からないんだぞ!」
そう宣言しながら、さゆりのいないほうを向く。
「雪君照れてるの? わたしは雪君にだったら襲われたいな~♪」
ぐはっ! だ、ダメだ! これは罠だ! 明らかに俺を落そうとしている罠だ!
「と、とにかく! 付き合いたてで、こういうのはないと思います!」
「え~? いいでしょ! わたしは、雪君のこと、大好きなんだから!」
「俺はそこまで好きじゃない!」
「そっか……。なら」
「だー! なんでカッター持ってるの!? 風呂場に持ってきてはいけません!」
そう言って、俺はさゆりの手からカッターを奪う。
「いいもん、まだ予備もあるもん」
そう言ってどこからかカッターを……。
「分かったよ! 一緒に入るから! だからカッターはやめてくれ!」
「うん! それでいいんだよ。雪君は私のものなんだから♪」
この子! 末恐ろしい!
「じゃあ、私が体を洗ってあげるね!」
「は、はい……」
逆らったらさゆりが死んじゃいそうなので、とりあえず合わせることにする。
そして背中に柔らかい感触が。と同時に、首元からいやらしい声が……。
「何してるの!?」
「え? 雪君の体を洗ってるんだよ」
「何で洗ってるの!?」
「勿論わたしの体で」
「馬鹿かー!」
「でも気持ちいいでしょ?」
「それはそうだけど……って違います! 恋人なりたてでこう言うのは禁止なの!」
「じゃあ、明日ならいい?」
「俺がいいって言うまでダメ!」
ってあれ? なんか変なこと言っちゃってるぞ! 俺!
「じゃあ、ちょっとだけ待ってあげるね」
『ちょっとだけ』というところは気になるが、とりあえずはやめてくれた。
そして俺もさゆりも洗い終わって二人で狭い浴槽に浸かる。
「温かいね」
「そうだな」
俺が返事をすると、さゆりは俺に抱きついてくる。
「ちょ、い、いきなりくっつくな!」
しかし、さゆりは離れずに俺の顔をじっと見つめて質問してくる。
「雪君はやっぱり、手首にカッターを当てない私がいいんだよね?」
「あ、ああ」
「じゃあ、カッターを手首に当てないようにすれば、今よりもっと好きになってくれるんだよね?」
「まぁ、そうなるな」
「じゃあ、今度からは手首にはカッターを当てないよ!」
「て、手首以外には?」
「勿論当てちゃうよ!」
はぁ、さゆりは馬鹿なのか?
俺はカッターを手首に当てるのじゃなくて、自殺や自傷をしようとする子がいやなだけだ。
それくらい、普通の子なら分かるはずなんだけどな……。
「ま、とにかく! 死んだらダメだぞ?」
「うん! 雪君のために生きるよ!」
そして、十分に温まったので、さゆりから上がらせて、さゆりが着替え終わってから俺も上がる。
俺が着替え終わってから二人で俺の部屋に戻る。
そして当たり前のように部屋には布団が一つしかなかった。
「母さん! 布団一つしかないんだけど!」
「あら、恋人同士だから、一つで十分じゃないの?」
「俺にそういう趣味はない!」
しかしさゆりは、
「わたしは嬉しいです! 雪君に襲われるように頑張ります!」
「うん、その意気よ! さゆりちゃん!」
うん、なんか変な会話しちゃってるよね。なんだかさらに疲れちゃったよ。うん。疲れたから寝よう。
電気を消して、布団にもぐる。勿論さゆりも。
そのまま寝ることにする。しかしさゆりが、
「今日はありがとうね。わたし、雪君のこと大好きだから、ほんの少しだけ変な事とかしちゃうんだ……。わたし、雪君の為に頑張るから! だから、明日からも、ずっと一緒にいてほしいな……」
「……」
「雪君、寝ちゃったの……? うん。おやすみ、雪君」
はぁ、人に好かれるってのは、本当に複雑な気分になるんだな、と実感中。
でも本当に、さゆりの笑顔は可愛いよなぁ……。
って馬鹿! さゆりに飲み込まれたら、一生このまま! いや! これより酷くなるかもしれない!
と、とにかく! 明日の為に今日は寝よう! おやすみ!
次、彩乃出る予定。