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ヤンデレ彼女と男の娘

あれです。いつも昼食を食べている場所は人気のない中庭ということにしといてください。

目が覚める。やはりさゆりの柔らかい感触はあるが、とりあえず部室の時計を見てみる。


「はぁ……」


時間は昼休みが終わりそうな時間帯だった。

多分中庭に行っても、彩乃はいないだろうな……。


「う~ん? あ、雪君おはよ~」


「とりあえず、外の空気が吸いたいんだが」


「そうだね! ずっとここにいたらカビが生えちゃうもんね!」


まぁ、多分生えないと思う……。


「じゃあ早速レッツゴーだよ! お弁当を持って行こう~!」


あぁ、持ってきてたんだ……。今日も多分、血みどろ料理なんだろうな……。










少し校内を散歩した後に、いつも昼飯を食べている、中庭のテーブルと椅子のある場所に向かう。


そして着いてみると、いつもは人がいないテーブルの前に、ルックス的には女の子にしか見えないくらいに、可愛い男子生徒がいた。

うん。俺はこの子を知っている。

声をかけようと思い、横から近づいてみる。


「雪さんがいない雪さんがいない雪さんがいない雪さんがいない雪さんがいない――」


その子は涙を溜めながら『俺がいない』と、ずっと呟いている。


「え、えっと……」


「雪さんがいない雪さんがいない雪さんがいない雪さんが――」


と、とりあえず、俺がいることを証明しないとな。

そう思い、男の子の肩に手をかけようとする。が、


「雪君! その子に近付いちゃだめだよ! その子絶対におかしいから!」


と、さゆりに止められてしまう。いや、しかし、


「お前も十二分におかしいと思うぞ……?」


「むぅ! わたしはおかしくないもん!」


俺の言葉に反応して、ムキになって、カッターを取り出すさゆり。


「だー! 分かった! い、いや、分かってるって! さゆりはおかしくない! 何もおかしくありません!」


「ゆ、雪さん!?」


「うぇ!?」


俺の大きな声で気づいたのか、男の子は驚いた様子だった。

そして、突然の反応で俺も驚く。


「良かった……。雪さん、昨日の午後も授業を受けてなかったですし、凄く心配してたんですよ……?」


涙目のまま、少し笑顔になる男の子。

というか、この子は別のクラスなのに、なんで俺が授業を受けてないって知ってるんだろうね……?


「え、えーっと、確か、景助(けいすけ)君だよね……?」


「は、はい……、覚えててくれてたんですね……? 僕、とっても嬉しいです……」


本当に嬉しそうにはにかむ景助君。あぁ、女の子だったら、男性がほっとかないだろうな……。


「まぁ、覚えてるよ、去年は同じクラスだったんだし」


「そ、そんなことまで覚えててくれてるなんて……、僕、幸せです……」


あ、両手で顔を隠しちゃった。ほんとに女の子みたいだなー。


「雪君!」


「うわっ!? な、なんでカッターを向ける!?」


「わたしの事は忘れてたくせに、この子のことは覚えてるんだね!?」


いや、確かに忘れてたけどさ……。


「さ、さゆりとは小学生の時以来だったわけだし!」


「わたしはちゃんと覚えてたもん!」


や、やばい! さゆりの手が今にも動き出しそうだ!


「そ、その……、あ、あれだ! さゆりが可愛くなりすぎてて、気づけなかっただけだ!」


「え!?」


さゆりは驚いて、カッターを手放してしまう。

そしてさゆりも、笑顔になって、両手で顔を覆ってしまう。


「そ、そうなんだ♪ わたしへの態度は、やっぱり照れ隠しだったんだね♪」


「え、っと、うん……。そうだよ……」


うん……。そういう事にしておこう……。


「これからは照れ隠しがなくなるくらい親密な関係になろうね♪」


変な事を言い出すさゆり。

そしてまたまた、ぼそぼそと呟く声が聞こえてくる。


「け、景助君……?」


「雪さんが死んじゃう雪さんが死んじゃう雪さんが死んじゃう雪さんが――」


今度は『俺が死ぬ』と連呼している。

いや、そんな本当になりそうな物騒な事、言わないでくれ……。

とりあえず景助君を、どうにかしないと。


「気にしちゃダメだよ! 関わったら雪君の毒にしかならないんだから!」


「そ、その言い方はあんまりじゃないか……?」


「そんなことないよぉ! この子は誰がどう見ても有害なんだだから! だからわたしが処理するね!」


あたかも正しいことをするかのように、新しいカッターを取り出すさゆり。


「いやいやいや! 待てって! とにかく! その危ない物をしまってくれ!」


「でも今処理しないと、雪君に害が及ぶんだよ!」


「そ、それでもだ! お、俺はだな! さゆりに人殺しなんてしてほしくないの! 殺したら牢屋いきだぞ!? いいのか!?」


俺の説得に、さゆりは笑顔になる。

さすがに分かってくれたか。


「わたしの心配をしてくれるんだね!? 分かったよ! 雪君の為に上手く処理するよ♪」


「えええええええ!? 全然分かってくれてないじゃん!? 違う! そういう意味じゃないから! とにかく殺しちゃダメだから!」


「え~? まぁ、雪君がどうしてもって言うんなら我慢するけど……」


「そうしてくれ……」


まぁ、とりあえずは我慢してくれたので良しとする。

後は景助君だな。


「死んじゃう死んじゃう死んじゃう死んじゃう死んじゃう――」


「景助君! とりあえず落ち着いてくれ。俺は死なないから!」


「ゆ、雪さん……」


気がついたようで、景助君は俺の顔を見る。

そして景助君の目からは、涙が溢れ出してきた。


「え!? なんで泣いちゃうの!? 俺は死なないってば!」


「そ、その、雪さんの顔見たら安心しちゃって……」


「そ、そうなのか……」


心配されるのはいいんだけど、過剰すぎやしませんか!? 景助君!


そしてさゆりは俺の腕をつかんで、


「雪君! こんな子放っておいて、早くお弁当食べようよ~!」


「あ、ああ……」


あんまり弁当に期待はしてないが、テーブルの前の椅子に座ることにする。


すると今度は景助君が、俺のカッターシャツの袖をつかんで、


「ゆ、雪さん!」


「ど、どうした?」


「じ、実は、僕もまだ、お昼ご飯を食べてないんです……。で、ですから! できれば一緒に食べたいなぁ。なんて……」


もの凄く一緒に食べたそうな目で、こちらを見つめてくる景助君。


「そうだな、どの道食べるんだし、みんなで食おうぜ!」


「い、いいんですか!?」


「授業に遅れてもいいんならな」


「あ、ありがとうございます! 雪さんとご一緒できるなんて、僕、とっても幸せです……」


さゆりと二人っきりだったら何されるのか分かったもんじゃないしな。あ、でも、景助君がいたらいたで、大変な気はする……。


「……」


さゆりの無言の威圧感が、俺に凄まじい恐怖を与えてくる……。


「え、えーっと、今日の弁当は何かなー? 楽しみだなー」


さゆりの機嫌を良くするために、適当なことを言ってみる。

そしたらさゆりは、いつもの笑顔で、


「今日はね~、雪君が昔から大好きな、牛肉コロッケだよ~♪」


とご機嫌に。


「マジか!? よっしゃー!」


牛肉コロッケが大好物なので、つい俺もご機嫌に。


そしてさゆりが、弁当の中身を自慢そうに見せてくる。


「じゃ~ん!」


「……」


そこには赤黒い、牛肉コロッケのような何かが、一面に広がっていた。

うん……。大好物だからといって、期待した俺が馬鹿だった……。


「美味しそうでしょ~!?」


「う、うん……。そうだな……」


はぁ……、肯定しないといけないんだよな……。


そして、景助君はもちろん、


「雪さんは牛肉コロッケが好き雪さんは牛肉コロッケが好き雪さんは牛肉コロッケが好き雪さんは――」


はは、なんだこの空間……。

そんなことを思っていると、さゆりが、赤黒い何かを俺の方へと近づけてくる。


「はい! 雪君あ~ん!」


「あ、あーん……」


少しかじる。うん……。相変わらずの鉄の味だ……。


「どうかな~? わたしの自信作!」


「す、凄く、美味しいです……」


「やった~! 沢山食べてね~♪」


はぁ……、これは絶対に半分も食べれないだろうな……。


「おぉー!」


景助君の方を見てみると、ピンク色の女の子使うような小さな弁当を開けており、中も、小さい卵焼きに、タコさんウインナー、プチトマトやミートボールといった感じの、まさに女子弁だった。


「ふぇ!? な、何か変でしょうか……?」


「いや、可愛らしい弁当だなーと思って」


「そ、そうですか!?」


『可愛らしい』という言葉に反応して、驚く景助君。

そしてそのまま、手をもじもじと動かして、


「え、えっと……、雪さんは、可愛らしいお弁当をどう思いますか……?」


「俺は好きだぞ」


「はぅ!?」


「え!? お、おい! しっかりしろ!」


何故か、鼻血を出して倒れる景助君。いったいどうしたと言うんだ!?


「ねぇ、雪君」


俺の方にさゆりの声が響く。


こ、怖い……。その低めの声で呟く感じがものすごく怖いんですが……。


「そ、その……どうかなさいましたか……?」


「わたしの弁当の方が好きだよね?」


「も、もももも! 勿論そうに決まってるだろ!」


かなりどもってしまったが、俺の断言が効いたようで、さゆりは、満面の笑顔になる。


「じゃあ、残しちゃダメだよ♪」


「は、はい……」


こうして、俺の長い闘いは続くのであった。







「一人じゃ食べきれないんだったら、全部あ~んってしてあげるからね♪」

はい。なんか趣味全開って感じですね。

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