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サルマが生物兵器だと分かった今、リュカは考える。
――魔法とは違う体系の力なら、魔力をたどって犯人を探す方法は使えない。それに、こんな小さな子供が魔法で言えば宮廷魔法士に匹敵するほどの力を使えるとは誰も思わない。実に暗殺向きの力だよ。奴隷商は誰かに頼まれて、この子を連れてきたのか。……いや、ちょっと待って……。
あることに気づき、とてもではないが寝ていられなくなったリュカは、枕元の燭台に火をともして起き上がる。サルマもつられて体を起こした。
「重要なことを聞く」
リュカはサルマをじっと見据えた。サルマもそれを静かに受け止める。
――思わず僕本来の口調が出てしまったけど、いいか、この子相手なら。
「君の力は、何か制限があるかい?」
「……殺そうと思う相手のある程度近くにいなければダメ」
サルマから返ってきたのは、リュカの想像したとおりの回答だった。
――やっぱりそうか。
リュカはひとつの結論を出す。
――十中八九、暗殺対象はラファラン、あるいは隣の領のジード侯爵だね。奴隷商の後ろにいるのは奴隷制度存続派の中でも過激な人々という所かな。まさかこういう手を打ってくるなんて……。
リュカにとってはどうでもいい父だったが、リュカの今の地位を磐石にするまでは、あの男には生きていてもらわないと困る。
――これは、クリスやエステルには気取られたくないな。金でつながってるだけの先生にも。両親は論外だ。つまり、僕とサルマだけで対処することになるんだ。
本当は、利用価値がなければサルマを行方不明か何かに見せかけて『処分』しようとリュカは考えていた。幸い、苛性ソーダやフッ化水素によく似た物質を作る魔法は覚えている。
しかし、どうやらリュカがその魔法を使うのは今ではなさそうだった。
――僕はハーレムを作りたいだけなんだけどなあ。
サルマの力って殆ど某デスノ……
と気づいてしまいました
というか以前に書いてる段階でなぜ気づかなかったのか、という話ですが