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ネタバレですが、カニバリズムを扱うので、苦手な方は飛ばしてください。
リュカの目が点になった。目の前の女の子と、オーガという単語が繋がらなかったのだ。
「は? それは、つまり、君がオーガの一族ってこと?」
サルマは小さく頷いた。リュカはファンタジーに出てくる人食い鬼を想像する。
――いや、そんな。まさか。
「もう少し、詳しく説明して欲しいんだけど……あー」
ここでいうオーガの一族がリュカの知っているオーガの一族と同じものなのか聞こうとして、それを聞くのはこの世界の住人としておかしい、と気づき、リュカの質問が止まる。
――どう言ったものかな……。
幸い、サルマはリュカが何かを言うより先に、自分で説明しだす。
「私たちの一族は、昔、人を食べてた」
いきなり、リュカにはなんともショッキングな話だった。
「大切な人殺されると、その人を偲んで、その肉を食べる」
――まさか、カニバリズムとは。いわゆる土着信仰とか言う奴? よくわからないけど。
想像して少し気持ち悪くなるリュカ。どうやら、自分は人を殺すことに抵抗はないくせに、人を食べるのは抵抗があるらしい、と認識した。
――ざっくり言うと、人を食べるのがオーガなわけだから、確かに彼女の一族はオーガと言える、のかな……?。
サルマの説明は続く。
「大切な人の肉を食べるのは、主に生娘。人を食べた生娘は魔法とは違った、大切な人の肉から貰った力で、大切な人を奪った人間を呪い殺した。それは魔法では探知できない力だった」
あくまでもたんたんと続けるサルマに、リュカは怖気を感じる。と同時に、なぜこんな小さな子が奴隷としてここまで連れてこられたのか想像がついた。
――いや、あくまでも想像だ。でも、それなら春を売るにも早すぎる子が奴隷として、しかも奴隷としてはそれなりに丁寧に扱われていたかの、説明がつく。
その想像が外れてほしいと思い、リュカはサルマに聞く。
「今は、殺された人の肉を食べる習慣はないんだね?」
頷くサルマ。
「僕は今までいろいろな人の話を聞いてきたけども、オーガという種族を聞いたことがないし、その力も知らなかった。つまり、オーガについて知っている人はすごく少ないのかな?」
頷くサルマ。
「でも、今でも人肉を食べれば力は使えるわけだね?」
頷くサルマ。
「もしかして、大切な人を奪った人でなくても、呪い殺せるの?」
頷くサルマ。
「聞きづらいけど、君は……生娘だね?」
頷くサルマ。
リュカはベッドの中で天を仰いだ。
――ああ、これはマズイ。マズイモノを買ってしまった。
今までより後悔の度合いを深めつつ、サルマに酷な質問をした。
「君は、奴隷商に親か、あるいは親類の肉を食べさせれたりしなかったかい?」
サルマは短く「両親」と呟いた。
リュカは確信する。
この子、サルマ=セルマ・ヘイロフスキーは生物兵器なのだと。
投稿しておいてなんですが、この話大丈夫でしょうか?
私自身、カニバリズムには非常に抵抗がある人間なので他の設定にすればよかったのでしょうが、私の脳みそではこの設定以外思いつきませんでした。
申し訳ありません。