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 ややあって、ラファランが重々しく口を開いた。反対されるだろうと考えていたリュカは何を言われても反論できるよう、身構えた。


 しかし、ラファランが声をかけたのは、リュカではなかった。


「サルマ君」


 ラファランの呼びかけに、サルマの動きが止まる。フォークを口に入れたまま、目だけをラファランに向けた。


 さすがに予想外で、リュカは口を挟めない。ラファランはサルマを警戒させないよう、笑顔で言った。


「君は、どうしたい?」


 サルマの反応は早かった。


 質問の意味を理解すると同時に、リュカを見上げ、ぎゅっと袖を掴んだ。それだけで回答になると思ったようだし、実際、ラファランにはそれで十分通じた。ため息をついて、眉間にシワをよせるラファラン。


「そうか。なら、そうするといい。ただ、父さんは反対だぞ」


 最後の言葉はリュカに向けられたものだったので、しっかりと頷いておく。


 こうして、サルマは奴隷として買われた身ながら暫定的に客人として扱われることになったのだった。




 その夜。


 サルマはリュカの隣で横になっていた。


 別に、リュカが彼女に手を出したわけではない。部屋を用意したにも関わらず、彼女がリュカから離れようとするのを拒んだからだ。


「寝たか?」


 暗闇の中聞いてみる。寝ているようなら、エステルをイジメにでも行こうかと思っていた。エステルは無性にイジメたくなるオーラを発しているので、こういう時の鬱憤ばらしにはちょうどよい。


 が、残念なことにリュカの思い通りにはいかなかった。


「……起きてる」


 小さいが、はっきりと彼女の声が返ってくる。


「そっか。じゃあ……」


――少々残念だが、まあいい。今日は、このシンデレラとお話でもするか。


「良かったら、君のことについて教えてくれないかな?」


 成り行きで買い、成り行きでこのうちに滞在することになった彼女の情報を集めたい、と考えていた。それ如何によれば、本格的に彼女を囲うことも考えていたし、反対に彼女が不慮の事故で、領外の山で屍を晒す可能性も考えた。


――さて、答えてくれるかどうか。


 リュカはあくまでも好奇心からといった顔で隣のサルマの目を見つめた。サルマは長く目を泳がせて逡巡したが、ポツリと一言だけ言った。


「私は、オーガ」

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