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瑠璃は5回の民へのお披露目を、しっかりこなしてくれた。
その間、私の気のせいでなければリアトリスさまがこちらをちらちらと見ていたように思う。でも、瑠璃はそれに気付いていないのか、それとも気付いていながらなのか、言葉を交わすことはなかった。
お披露目の合間ごとに私室に戻ったが、部屋に入る瞬間に私と瑠璃は入れ替わる。メイドの目もあったので、私と瑠璃はその間話し合うことはできなかった。
『……お待ちください、ラピス王女』
ようやく5回目のお披露目が終わり、部屋に戻ろうとした瑠璃に、リアトリスさまが声をかけた。結局ラピスさま、と呼びかけられたのはあの一度だけ。私はそれを、なんとなく寂しく思った。
瑠璃はゆっくりと、優雅に振り返って礼をする。
『はい、リアトリスさま』
『あ……明日には出立ですが、体調などは大丈夫そうですか』
ちくちくと視線を感じる。
露骨にじろじろ見る人はいないけれど、誰もが私たちの会話を気にしているのがわかった。特に、母がはらはらした目で見ているのが視界の端…私から見ると正確には、てれびの端に映った。
『えぇ、体調はもうすっかり良いですわ。お気遣いいただき、ありがとうございます』
表面上は穏やかで、丁寧な声。……でも私には、瑠璃の気持ちが伝わってくる。
リアトリスさまに対する怒りや不信感、それでもしっかりと微笑んでいるのはすごい。瑠璃は何か、気持ちを出さないような特別な訓練でもしたことがあるのかしら。
『馬車での長旅になる……その、できるだけ負担がかからないようにするつもりですが、何かあれば言ってください』
『まぁ……』
リアトリスさまの言葉に、瑠璃は驚いたようだ。
まじまじとリアトリスさまを見るけれど、リアトリスさまは顔を伏せていて目が合わない。何を考えているのかは、私にも、瑠璃にもわからなかった。
けれども、瑠璃はすぐにリアトリスさまへの警戒心を取り戻した。
『ありがとうございます。リアトリスさまのお気遣い、しっかりと父にも伝えますわ』
それは……。
その優しい言葉は父への体裁のためだろう、と瑠璃は言うのだ。せっかくの優しさなのに、それはあんまりでは……と一瞬思ったけれど。
……でも、私も同じように言ったかもしれない。これは私への優しさじゃない。勘違いしないように、と自分への戒めのために。
けれど、瑠璃の言葉を聞いたリアトリスさまは……驚くほど冷たい目をしていた。
『……えぇ。よろしくお願いします』
あぁ……これは、もしかして失敗してしまったのでは?
私はちくちくと胸が痛むのを感じた。この痛みは、私のものか瑠璃のものなのか……よくわからなかった。




