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5-3

とさ、と軽い衝撃を背中に感じて、気付けば夢の中の白い部屋にいた。どうやら、入れ替わりはうまくいったようだ。


私はぼんやりと天井を見上げる。

本当にうまくいくのだろうか。私の代わりに、瑠璃が表に出る。お披露目のために出るだけだから、誰かと私的に話すことはほとんどないはず。でも…それでもやっぱり、うまくいくか不安だ。


『ラピス様、ご気分が悪くなったらすぐに教えてくださいませ』


テーブルの向こうのてれびから声が聞こえて、私は体を起こした。なじみのメイドの声だ。


『えぇ、ありがとう。今日は大丈夫そうよ』


瑠璃はこの部屋で私をずっと見て、話し方や身のこなしを練習したと言っていた。多少のぎこちなさはあるものの、私を憐れむメイドが気付く様子はない。


バルコニーの前には、父と正妃さま以外はみんなそろっていた。母が心配そうにゆっくりと近付いてくる。


『ラピス、気分は悪くない?めまいや頭痛は?』

『何も問題ありませんわ。ご心配をおかけして……』

『まぁ、心配するのは当然だわ。あなたは私の大切な娘ですもの』


言いながら、母はきっ、と近付いてきたリアトリスさまをきつい目で見る。


『もう、決して、ラピスを危険にさらすようなことはしないでくださいませ』


あぁ……、また、そんな言い方を……。

私を心配してくれるのはわかるけれど、そんな言い方をしたらまたリアトリスさまは不機嫌になるのに……。


私ははらはらとてれびを見る。

瑠璃が何か、とりなすようなことを言ってくれればいいけど……。


けれど、リアトリスさまの反応は私の想像とは違った。


『……はい、』


リアトリスさまは神妙な表情で、母の言葉に小さく頷いた。

この反応には、瑠璃も少し驚いているようだ。瑠璃の驚きが、自然に伝わってくる。母も毒気を抜かれた顔で、きょとんとリアトリスさまを見ていた。


『国王陛下、妃殿下のおなりでございます』


声がかけられて、父と正妃さまがいらっしゃる。

みんな一斉に礼をする。瑠璃も…問題なく、できているようだ。


『ラピス、顔を上げよ。……体調は大事ないか』


父から声がかけられる。瑠璃は礼をやめてまっすぐ立ち、父にはい、と返事をする。


『ご心配をおかけしました』

『うん。無理はしないように。……娘を、支えてやってほしい』


父がリアトリスさまにも声をかける。……私はとても驚いた。父はローズお姉さまが駆け落ちしてしまった負い目からか、リアトリスさまに積極的に何かを言うことをためらっているように思えたから。


『……はい、国王陛下』


それに、はい、とリアトリスさまが応えているのも。

昨日瑠璃が言ったことが、そんなに堪えているのかしら。


父と正妃さまは、そのままバルコニーに向かう。次は、私たちの番だ。


『……ラピスさま』


私はぱっ、と顔を上げた。

今のは……まさか、リアトリスさまの声?はじめて名前を呼ばれた気がする。瑠璃はそのことに気付いているかしら?


腕を組むように促すリアトリスさまへの、瑠璃のとげとげした感情が伝わってくるから気付いていないかも。

それでも私は、名前を呼ばれたことが…少しだけ距離が近づいたようで、嬉しかった。

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