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ふたりの世界で1

突然私の夢の中に現れるようになった女性、瑠璃。

私が眠っている間だけ話ができる瑠璃を認識した時、私は最初都合のいい夢を見ているのだと思った。

夢の中でだけ話ができて、私を慰めてくれるお友達、なんて。

子供っぽすぎるけど、いかにも夢の内容だったから。


でも、瑠璃はどうやら確かにいて、私が現実を拒絶する時に都合よく物事を進めておいてくれる。


私がリアトリス様から心無い言葉を投げつけられ、もう本当に耐えられそうにないと思った時、気付けば瑠璃が私としてリアトリス様と相対してくれた。

私には到底できないような振る舞い、言えないようなことを言ってくれた。


本当は、私もわかっていたのだ。ただリアトリス様の言うことに耐えるだけではいけないことに。確かにリアトリス様の振る舞いは、目に余る。いくらこちらに非があろうと…ただ一方的に、私を傷付ける権利がリアトリス様にあるわけではない。


でも、私はリアトリス様に言えなかった。

あなたの行いは、言葉はひどい、と言えなかった。


それを、言ってくれる、と……瑠璃は言うのだ。


「あの男が話しかけてきたら、これからはすぐ私に代わって」


瑠璃はそんなふうに言う。


「でも、……」

「もちろん、ずっとってわけじゃないよ。でも今のあの男の態度はひどすぎる。ラピスが優しくていい子だから、我慢しているのをいいことに……。だから私がガツンと言ってあげる。態度が改善してきたら、少しずつ気付かれないようにラピスの時間を増やすの。もちろんあの男が変わらなければ、私がずっとラピスの身代わりになるから」

「そんなことが……可能なのでしょうか、」

「できるよ。だって、隣国に嫁いだらもう家族とは離れるんだし、連れていくメイドも少ないんでしょ?だったら、気付かれることもない」

「それは……」


瑠璃の言葉は、確かにその通りだ。

ラズリーに嫁いでしまえば、私はひとりぼっち……。

ローズお姉さまが嫁ぐ準備をしていた時はメイドを何人もつれていく手はずになっていたけれど、あまりに準備期間がなくて私のなじみのメイドは間に合わなかった。


「瑠璃が、リアトリス様に…ひどいことを、言われるのでは、」

「私は平気よ。ラピスよりお姉さんだから」


瑠璃はにっこりと笑う。

その笑顔は、私の実のお姉さま……ローズお姉さまとも、ダリアお姉さまとも違った。


「もちろん、私も大人だから失礼すぎることは言わないようにする。ラピスももちろん、そこは見張ってて。でも、このままじゃラピスはつらいだけだよ。そんなの、私もつらい」

「瑠璃……、」

「私は、なんでかわからないけどラピスの体にお邪魔しちゃってる身だから…これくらい、させてほしい」


その言葉が…なんて嬉しかったことか。


「ありがとう…ございます、瑠璃……」


迷惑をかけると思って、父には言えなかった。

心配させたくなくて、母にも言えなかった。

でも、本当は。


「私、本当はもうつらいの……リアトリス様にお会いするのが……」


ぽろり、と涙が出た。

そうしたら、止まらなかった。


「こんなこと言うべきじゃない、私は王女だから……。でも、あの方に冷たい目でみられるのが、つらい……」


そこまで言ったところで、ふわりと全身が包まれた。

……瑠璃に、抱きしめられていた。


「つらかったね、……がんばったね」


あたたかい。

こんなぬくもりを感じたのは、いつぶりだろう。もう長いこと、私を抱き締める人なんていなかった。だって、私は王女だったから。

……でも。


ここでなら、……瑠璃になら、私は本当の気持ちを話していいんだ。


ふたりだけの空間で、私は小さな子供のように声をあげて泣いた。


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