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大ヒット小説『騎士とモルガナイト』、通称『騎士モル』

主人公はローズ・モルガン。モルガン王国の第一王女だ。ローズは幼い頃から隣国ラズリーの第一王子と結婚の約束をしており、ついに半年後、生まれ故郷であるモルガンを離れることになっていた。

だが、ローズ王女には昔からの思い人がいた。兄の学友で、ローズの護衛騎士を務めるアスターだ。アスターは騎士の家系で、貴族ではあるが身分は高くない。しかも、ローズは数か月後には隣国に嫁ぐ身であるのだ。許される恋ではないと、気持ちを抑えようとするローズ。だが実はアスターも同じ気持ちで……。


というのが、『騎士モル』のおおまかなストーリーだ。

ベタだが王道の、身分違いの恋。


私はローズが駆け落ちしたあとのモルガンがどうなるのか、そればかり気になってしまっていたが……。

その後の顛末を、まさか当事者から聞くことになるとは。


「そういったわけで、私がローズお姉さまの代わりにラズリー王国に嫁ぐことになったのです」


いや!いや……やっぱりこうなってるじゃん!

ローズが幸せになった陰で、不幸な人が生まれてるじゃん!しかも、15歳の妹って!


「その、あなたのお姉さんをひどく言うつもりはないんだけど……ひどすぎない?自分は愛する人と駆け落ちして幸せかもしれないけどさ、15歳の妹が急に結婚することになって……」

「瑠璃は私の心配をしてくれているんですね。でも、それはいいのです。私は愛する人もいませんし、いずれは誰かと結婚することになるんですから。別に、それがラズリー王子でも嫌ということはありません」


え…っ、けなげすぎない……?

私はじわりとにじんだ涙を、まばたきをして必死に隠した。


「ですが、リアトリスさまが…」

「ラズリーの王子だよね。結婚相手の」

「はい。……リアトリスさまは、私ではご不満なようで……。確かに、ローズお姉さまのような美しくお優しい方と結婚できると思っていたのに、相手が急にわたしのような子供になってしまったら、それはお嫌でしょう」


いや、いい子すぎる。


「嫌って言ってもさぁ、……」


ラピス、様?(と呼んだ方がいいのだろうか。王女さまだし)は困ったように目を伏せて微笑んだ。すると、その途端……ラピス様の記憶が、頭の中に流れ込んできた。

ラズリー王子の無表情、冷たい言葉、拒絶する背中。

これは…本当に、こんなことをされたのか?

私はラピス様の顔を見た。ラピス様は、微笑んで小さく頷く。


こんなの、ひどすぎる。

ぼろ、と思わず涙があふれた。


「まぁ、瑠璃?泣かないで」

「だって、こんなの…ひどいよ。こんな……」


ラピス様が思い出したことで、きっと私の方にも記憶が流れ込んできたのだろう。


「ラピス様は、何も悪いことしてないのに……」

「私のために泣いてくれてありがとう、瑠璃。私のことはラピスと呼んで。私たち、もう一心同体でしょう」

「一心同体……。そうなるんでしょうか」

「……おそらく」


ラピスは、神妙に頷いた。


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