裁判長
マークワンの声が、冷徹な音響装置を通じて場に響く。
> 《本裁判に無関係な発言は、以後すべて記録対象とし、裁定に影響を及ぼす可能性があります。》
> 《また、本件に直接関係しない者は、直ちに傍聴席へ移動してください。》
その声に、場の空気が再び引き締まった。
精霊たちも、さすがに無言で移動を始める。
トーマスはルカに促されながら、静かに後方へ下がっていく。
ノームだけは、俺の横にとどまっていた。もちろん、弁護人として。
その時、俺はふと隣のマルカを見る。
創造者であり、このマークワンの制御権限を持つはずのマルカが、なぜか何も言わず傍観している。
(……いや、違う。睨んでる)
マルカがこちらを鋭く見ていた。
俺は、マークワンの「創造物が創造者に牙を剥く構図」に、ひとこと言ってやりたいと思ったが、 今この場で発言したら即アウト。
──だが、マルカには伝わったらしい。
口元だけを、まるで無声映画のように動かしていた。
> ガ ン バ ッ テ
(……マルカ)
その応援が、俺の背中を押す。
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マークワンが宣言する。
> 《弁護人、発言の機会を与えます》
ノームはスッと立ち上がる。笑顔のまま、だがその口調には芯があった。
> 「皆さん、ミリウスさんは罪に問われていますが、
そもそも“兄妹愛”と“膝枕”は法的にどう解釈されるべきでしょうか?」
> 「被告は、ただ癒しを求めたにすぎません。
……それを罪と呼ぶなら、私は――人類の希望を弁護する者として、ここに立ちます」
(……やばい、ノーム。ちょっとカッコいいじゃないか)
その瞬間、マークワンの目が僅かに光った。
> 《記録しました。“人類の希望”》
俺「やめてくれ! それ、たぶん判決に響くやつだ!!」
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