勝利請負人
俺の「ノームを弁護人に!」という叫びに対し、遠くから手でバツ印を作っていたノームだったが——
次の瞬間、ニコニコと笑いながら小走りでやって来た。
「はーい、弁護人のノームでーす!」
俺は驚いてノームを見た。
「え? さっき拒否ってなかったか?」
ノームは小さく舌を出す。
「えへ、冗談です♪ さっきから面白いことしてるな〜って思ってたんですよ。ちょっと混ざりたくなっちゃって。だから、ミリウスさん、呼んでくれてありがとう♪」
「……あの手のひら返し、ある意味最強じゃないか?」
ウィンディーネがぽつりと漏らす。
マークワンは淡々と宣言する。
《では、弁護人ノームの就任を正式に認めます。法廷ミッション・オールグリーン》
エルミィは腕を組み、むすっとしていた。
「……なんでああいう子が“許される”んだろうね……」
イフリートもぼそりと同意する。
「うん……あれは“反則”ってやつだよね……」
しかしノームは気にしない。俺の横にぴたりと立ち、何やらごそごそと自作の「弁護人バッジ」を取り出し、胸に装着する。
「よし、気合い入れますよー! ミリウスさんを無罪に導いて、みんなの誤解を晴らしてあげますっ!」
(……なんか、すっごい不安なんだけど……でも、ちょっと嬉しいのはなんでだ)
「裁判長、裁判を再開する前に……被告ミリウス君と、少しだけ話をさせてください。5分で済ませます」
にこやかに手を挙げたのは、他でもない俺の弁護人・ノームだった。
マークワンは短く応じる。
《認めます。持ち時間は厳守で》
ノームは俺の肩を軽く叩き、ほら行くよと目で示すと、俺を連れて証言台の陰へと移動した。
「さて、ミリウスさん。どうする?」
「どうするって……」
「完全勝利を狙う? 減刑に持ち込む? それとも……敗訴して、演出としては最も映える悲劇のヒーローにする?」
ニコニコと微笑みながら、ノームはまるでケーキの味を選ばせるような調子でそう言った。
俺は言葉を失った。
(……こいつ、分かってやってる)
この“ふわふわした天然娘”は、実は全部、最初から見えてたんだ。
俺が弁護人を求めるタイミングも、その場の空気も、エルミィの怒りの矛先も。
そして今——俺の命さえ、裁判の“ネタ”に乗せることさえ、覚悟のうち。
(……面白ければ、自分の命すら天秤にかけられる)
(俺達の“選ばれし業物”と同じ匂いだ。いや……もしかしたら俺以上か)
「なあ、ノーム……」
「ん?」
「……裁判長。弁護人の変更を求めたいのですが」
俺がそう言うと、マークワンの返答は容赦なかった。
《却下します。弁護人は貴方自身の意志で選ばれたものです。裁判も始まっていない時点での交代は、原則認められません》
「……だよな」
(つまり、あのとき既に俺は……)
横を見ると、ノームが嬉しそうに、どこか誇らしげに笑っていた。
「……ようやく気付いた?」
この娘は、何もかも分かってて、俺を導いてたんだ。
ただ一つの目的のために——“最高に面白い結末”を。




