シルフとの契約。
俺はシルフに問いかけた。
「シルフ……どうしたんだ。なぜ、皆の命を危険に晒すような真似を……」
シルフは、振り返らずに答える。
「私がいないと、火の鳥は捕まえられないわ。
マルカが作ったおかしな道具を使っても、毒素は中和できない。
私の風の力で、毒素がミリウスたちに届かないように調整してるの。……今もずっと、ね」
そして、正面からこちらを向いた。瞳に、強い決意を宿して。
「ミリウス。私と契約して。
でないと、皆、死ぬよ」
「……なんで今さら。なんで、俺との契約にこだわるんだ」
俺が問うと、シルフは目を伏せた。
(……やっぱりか)
シルフは、風の精霊王の娘だ。
誇り高き“王族”の血。
それが──イフリートと契約したエルミィに、後れを取ったと感じてる。
半神と精霊の契約は、精霊界では最高ステータスのひとつ。
イフリートも、ミリウスとの契約を望んでいたことがあった。
「私と結婚して、子を成して。
別にエルミィがいたって、私は構わない。
神って、本来──多妻だし」
……その言葉の直後だった。
「構わないって言うなあああああああ!!」
エルミィが、ぶっ殺しそうな目でシルフを睨んでいた。
「シルフが気にしなくても……私が! 私が気にするんじゃあああああッ!!」
その瞬間。
「癒しの雨!」
「業火の嵐!」
ウィンディーネとイフリートが、同時に詠唱を叫ぶ。
「うおおっ――!?」
空が割れ、風が鳴いた。
そのあと、俺たちは、全員、気を失った。




