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トーマスの苦悩

トーマスの視線は、後方を歩くエルミィに向けられていた。

その目に、かすかな後悔と痛みが浮かぶ。


(……エルミィ

に、感情のコントロールの術を教えたのは俺なんだよな)


表情をしかめる。

あの子は、ちゃんとそれを学び、実践してしまった。

けれどその「術」は、感情を整理するものではなく、抑え込む技術だったのかもしれない。


(あの態度じゃ……ミリウスは逆に、エルミィを遠ざけるだけだ)


無邪気な好意が、静かで曖昧な距離感に変われば、相手は“気づかない”か、“避けようとする”。

ミリウスも、最近ようやくエルミィの存在を気にかけるようになった。

それだけに、タイミングを誤ればすれ違いは深刻になる。


(感情ってのは、水道管みたいなもんだ)


古い管を修理するとき、ひとつの漏れを塞げば、圧は別の場所にかかる。

漏れを止めたはずが、別の継ぎ目で爆発する――そんなことは、しょっちゅうだ。


(全部を新しい管に取り替えるなんて、人間にはできねぇ。俺も、あの子も、ミリウスも)


溜め込んだ熱量が、どこでどう吹き出すか。

それが誰かを傷つける前に、何とかできればいいのだが

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