同性の味方
「エルミィ様……お気づきの通り、エルミィ様とミリウス様は、人の姿をしていますが、半神の存在です」
「神話や伝承では、むしろ近親者を選ばないほうが珍しいくらい。だから、そのことについては悩まなくていいと思います」
「――素直に、アタックすれば」
その言葉に、エルミィは静かに目を伏せた。 仄暗い瞳の奥に、揺れる影が浮かぶ。
「……それをして……兄の顔に困惑の表情を浮かべられたら……私は……何もできない」
イフリートは静かに、独りごとのように呟いた。
「ウインディーネの視線は鋭いけれど、どこか穏やかです。 きっと、最も警戒しているのはマークワン……理性と力を備えた存在でしょう」
「でも……私の本能は、別のものを告げている」
「……この方を怒らせてはいけない。決して、エルミィ様を」
「そして──それに一番正解に近づいていたのは、恐らく……」
「……あの男。道化を、わざと演じていた者」
イフリートの視線は、少し離れた場所でパン生地の弾力について熱弁しているトーマスへと向けられていた。イフリートはそっと思った。
エルミィ様の傍に、本当に寄り添える者は、意外と限られている。
マルカ様やリゼリナ様――立場が重すぎる。
ウインディーネは、最初から“向こう側”にいる。
トーマス様は優しく、強く、賢い。けれど、だからこそ近すぎる。
「だから、私が……」
イフリートは静かに決意する。
「私が、エルミィ様の側にいよう。
同性として、精霊として、契約者として。




