本音と建前の間に
「出てきてちょうだい、リゼリナ。
ウィンディーネを──煮るなり焼くなり、好きなようにしていいよ」
俺はマルカに尋ねた。
「さっきと言ってることが違うじゃないか?」
マルカはしれっと言い放つ。
「本音と建前を使い分けるのが、社会人の常識よ」
そのときだった。
突然、目の前にマークワンが現れた。
「……え? ウィンディーネを怖がらせないように、別室で待機してたんじゃなかったのか?」
思わずそうつぶやく。
マルカは肩をすくめ、得意げに笑った。
「光学迷彩と、対妖精索敵能力の妨害効果──すごいでしょ?
あんまり連続で使うと、マークワンの原子炉、ちょっと溶けかけちゃうんだけどね」
その直後、マークワンは、ぷしゅぅ……と、どこか調子の外れた音で蒸気を漏らした。
明らかに通常動作とは異なる、わずかに不穏な呼吸のようだった。
その音に、ウィンディーネの肩がびくりと震えた。
彼女は気絶こそしなかったものの
頭を抱えてダンゴムシのように身を丸める。
そして──
マークワンが蒸気を漏らしたのとほぼ同時に、ウィンディーネもまた、
別の“何か”を、漏らした。
彼女の顔は青白く、震えが止まらない。
ただただ、小さな声で繰り返していた。
「あいつはやばい……あいつはやばい……あいつはやばい……」
マークワンは現れてから、一言も発していない。
その沈黙が、
……リゼリナは、何を考えているのだろうか。




