マークワン ウインデーネ友達 オデェ 殺す 良くない
マークワンは、電子的な合成音声で告げる。
「抹消対象物なし。敵対行動、確認されず。警戒を三レベルダウン。警戒範囲を半径5キロに拡大。冷却システム作動。対機モードに入る」
俺は、馬車の陰で震えているウインデーネに声をかける。
「マークワンの言ってることの半分は分からないが……とりあえず、ウインデーネを攻撃するつもりはなさそうだ」
「ウインデーネ、話が聞きたいから馬車の陰から出てきなさい」
ウインデーネはなお一層震えながら、
「騙されるもんか、騙されるもんか、騙されるもんか……」
トーマスが俺に向かって言う。
「なあミリウス、これなんだ? 頭を抱えて丸まってるダンゴムシ」
俺:「多分ウインデーネじゃないか。自分で名乗ってたし」
トーマス:「ミリウスが呼んだんじゃないのか? 俺を攻撃してきたし」
俺:「俺もさっぱり分からん」
そこへマルカが駆けてくる。
「導師! ミリウス! 大丈夫!? 急にマークワンが対妖精戦闘モードで飛び出して行ったから、二人が心配で走って来たの」
マルカは肩で息をしながら続ける。
「マークワンは今、待機モードになってるけど、まだ敵が潜んでるんじゃ――」
俺は馬車に隠れているウインデーネを指さす。
「多分、ウインデーネをマークワンが警戒してるんじゃないか?」
マルカも、馬車に隠れているダンゴムシを視認する。
「あれ、水の妖精じゃない? これから証を貰いに行く先の仲間に危害が及んだとなれば……まずいわね。ここで証拠隠滅しておく。マークワン、ゴー」
マークワン:「オッケー、ボス」
マルカの言葉を聞いたウインデーネは「ヒッ」と悲鳴を上げる。
その瞬間、馬車の影からぴしゃりと水音が跳ねた。
トーマス:「……なあ、今なんか漏らさなかったか? ダンゴムシが」
俺:「ああ……漏らしたな。……ていうか濡れてる」
ウインデーネ(震え声):「ち、違うもん! 水の妖精だもん! 汚くないもん!」
俺:「そういう問題じゃないと思うんだけど……」
マルカ:「まあ、本人が水の妖精って言ってるなら、ギリセーフ……かも?」
俺:「週刊アサシン免許皆伝の人がそれ言う?」
マルカ:「ミリウスが命の恩人をダンゴムシ扱いするからこうなるのよ」
トーマスは歩いてウインデーネのそばまで行く。
俺は驚く。さっき自分の肩口から腕を切り飛ばした相手なのに、恐ろしくないのか。
トーマスは俺たちに手招きしながら言った。
「ウインデーネ、どうやら恐怖で気絶したみたいだ」




