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マルカの寝室
マークワンが、突如として警告音を発した。
リゼリナの声ではない。マークワン本来の、無機質で冷たい音声。
「妖精反応──識別コード:レッド。
対妖精モードに移行。30秒後にシャットダウン、再起動します。
飛行モードにチェンジ。エンジン点火。進行方向の障害物をすべて排除。
繰り返す。排除。──これは訓練ではない。これは訓練ではない──」
低く、重く、誰にも止められない宣言。
「5秒前からカウントダウンを開始。
5、4、3、2、1──エンジン点火、リフトオフ」
夜中。
静まり返った村の宿屋で、突如唸り始める轟音。
マルカは耳を両手で覆い、歯を食いしばって耐えた。
次の瞬間。
マークワンが宿屋の壁を破壊し、瓦礫を散らして飛び出す。
石壁が崩れ、悲鳴のような風が吹き込む。
マークワンが、夜空に打ち上がった。
星を裂くように、轟音とともに、上昇する。




