今修行を付けても良いんだぞ。
真夜中の二時過ぎ。
俺は体を起こす。
宿屋の土産物屋でこっそり買った木刀を手に取り、
反対側で寝ているはずのトーマスの頭めがけて木刀を振り下ろす。
手ごたえは無かった。
毛布を捲る。
枕を何個か繋いで膨らませてあるだけだった。
「やあ。明日は早いんだから早く寝ろよ、ミリウス」
トーマスは馬車の外から、俺の行動を見ていた。
俺は羞恥心で体が熱くなる。
俺はトーマスに打ち込む。
身体の中心に急所が集中している。
俺は急所を狙って何度か衝きをトーマスに仕掛ける。
トーマスは難なく俺の攻撃を躱す。
トーマス
「弟子が練習熱心だと、師匠もおちおち夜も寝てられないな」
俺
「うるせえ。俺とエルミィを操るのは止めろ。
御託を並べてるが、結局、俺らを操ってるんじゃないか。
何が導師だ、このペテン師。化けの皮を剥いでやる」
トーマス
「エルミィの気持ちが分かるようになったら、
今度は自分の気持ちに気づいて気持ち悪くなって酔ったか。
その気持ち悪さが耐えられなくなって、今度は俺に攻撃してくると。
バカ弟子ほど可愛いというが、本当なんだな。
自分で招いた結果を、すべて他人のせいにして生きていくつもりか?」
俺
「まだ口を開いて煙に巻く。
お前のやり方にはとっくに俺は気づいてるんだよ」
トーマス
「だから実力行使と。──実力行使というのはな、
真に実力があるやつが使ってこそ、有効なんだ」
トーマスの拳が俺の右頬に当たる。
遠慮のない拳の威力に、俺の奥歯が折れる。
トーマスの回し蹴りが右脇腹に当たり、
肋骨が何本かと、内臓に深刻なダメージを与える。
俺は口の中に鮮血が溢れ出し、嗚咽しながら吐き出す。
トーマスは俺の後頭部を両肘で押さえて、顔に膝蹴りをした。
顔の中心が凹む、嫌な音がした。
トーマス
「エルミィの為にも、君はここで消えたほうが良い」
「エルミィの心のケアは俺に任せろ」
──俺は、「またそうやってエルミィを操るつもりか」と
声に出そうとしたが、顔自体が変形して言葉は発せられなかった。




