我と共に滅びぬ
少しづつ物語が進んでいます。
ウインディーネは、先ほどから何も話さないイリーネに顔を向けた。
「どうしたんだい、黙りこくって?」
イリーネはさらに深くうつむく。
「せっかく実のむ、す、こが……イリーネ様に会いに来てるってのに」
イリーネの肩が、小さく震えていた。
そんな中、エルミィがぽつりと言った。
「おばちゃん、ママをいじめちゃ……メッ、なの」
ウインディーネは口元をほころばせて、
「エルミィ様、私は“お姉さん”ね?」
そう言って、こちらをちらりと見る。
「それに、ミリウス様も――実の母親に再会できて、お喜びのご様子ですよ」
……やはり、ウインディーネは私への攻撃が効かないと判断し、標的をイリーネに変えた。愚かにも、同じカードを二度使うとは――
だが、おかしい。エルミィの様子が。
「おばちゃん、ヴァカ」
その言葉と同時に、エルミィの腕の中にヴァイオリンが現れた。
彼女は怒りにまかせるように、激しく弾き始める。
だが――私には、その音が聴こえない。
聴こえないのだ。才能が、ないから。
それでもウインディーネは、口から泡を吹き、がくりと倒れた。
神に近しい精霊――人間ごときに聴こえる音ではないのだ。
そして気づくと、ブラックウッド家の者たち、才能ある者たちは全員、白目を剥いて倒れていた。
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才能がないのが才能。