私が説明する。
マルカが口を開いた。
「リゼリナ、ごめん。私が説明するわ」
「リゼリナの今の姿――対精霊汎用人型土木人形、通称。これは私が、ミリウスのために開発した人形なの」
「水害の多い河川の治水工事……誰もが成功できず、それどころか、大きな人的被害まで出していた。誰も手を挙げなかった、危険な任務だったわ」
マルカは続ける。
「でも、ミリウスは私に相談してきた。私には勝算があった。そう、《マークワン》があるから」
「マークワンがあれば、誰にもできなかった任務が遂行できる。これはチャンスなんだと、私は言ったの。王様に“任務が成功したらリゼリナとの婚姻を許してほしい”と願い出なさいと」
「失敗するのが目に見えていたその任務を、ミリウスは押し付けられた。でも、治水工事は見事に成功したの」
「水の精霊が工事を妨害しようとしても、マークワンには通じなかった。無事、全てが終わった。だからこそ、ミリウスは婚姻の許可を得た。そして、マークワンは二人の結婚の最大の功労者だった」
俺は、表情を曇らせる。
「……水の精霊に、すごく恨まれてるんだな」
トーマスが静かに頷きながら言う。
「だろうな。これは、ちょっと厄介かもな」
「でもな、まだ“試練に失敗した”って決まったわけじゃない。たとえ失敗したって、どうなる?」
「さっきも言ったけど、任務が失敗しても、リゼリナが何もしなくても、世界は結局崩壊するんだ」
「無責任に聞こえるかもしれないが――だったら、試練を受けた方が得じゃないか?」
俺は大きく頷く。
「……そうだな。リゼリナさん。俺はあなたに協力します」
エルミィも前に出て、はっきりと言った。
「私も、リゼリナに協力する」
俺はマルカの方を向いた。
「マルカさんは、どうする?」
マルカはにやりと笑い、答える。
「決まってるじゃない。もちろん、協力するわよ」
そして、皆の視線がリゼリナに集まった。
リゼリナはまだ青ざめた顔をしていたが――その口調は力強く、はっきりしていた。
「試練、受けます。いえ……受けさせてください」




