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調整者 ルカ

事務所のドアに、コンコンとノックの音が響いた。

俺がドアを開けると、そこには中性的な容姿の人物が立っていた。左手には、布に包まれた箱を抱えている。


その人物は無言で名刺を差し出してきた。名刺にはこう記されていた。


調整者 ルカ


少し警戒しながらも、俺はルカを事務所の中へと招き入れた。


ルカは皆の前に静かに立ち、落ち着いた声で話し始める。


「世界は今、とても深刻な状況にあります。どうか皆さんのお力をお貸しください」


その言葉を聞き終えるよりも早く、俺はルカの首根っこを掴み、事務所の外へ引きずり出した。


「悪いけど、怪しい新興宗教の人間なら――もうパーティーに一人いるんで、間に合ってるんだよ」


ドアを閉めようとしたその瞬間、ルカが素早く足を滑り込ませて、それを阻止する。

どう見ても、こういう展開には慣れているらしい。


そして、ドア越しに、冷静な声で告げた。


「そこにいるリゼリナさんが、今回の件に深く関与しています」


……俺はドアを全開にし、表情を一転させた。


「やあ、ルカ。よく来てくれた。待ちわびてたよ」


「そんな寒いところに立ってないで、さあ、早く入って、入って」


ルカは軽く頷くと、丁寧な口調で言った。


「ありがとうございます。これ……創造主様からのお遣いです。つまらないものですが」


そう言って、先ほど左手に抱えていた箱を俺に差し出した。

俺はその箱を静かに受け取る。


ルカはまっすぐこちらを見据えて、言葉を重ねた。


「世界は今、崩壊しかけています。リゼリナさんの行動が、その原因です」


「イレーネ様は、天界で神威を失い、昏睡状態にあります」


「宇宙の星々の誕生も、徐々に止まり始めています」


「――あなたたちは、旅立たねばなりません」

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