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高得点
俺は何も言えずにいると。
トーマスは優しく頷き、静かな声で言った。
「……60」
先ほどより少しだけ高い点数を、
その直後、痛みのせいか顔を歪め、マルカの方を向く。
「氷と……痛み止めの薬、くれ」
マルカは机の引き出しを開けて、
氷と痛み止め、それから水を差し出す。
「導師……あまり無茶をしないでくださいね。
エルミィがミリウスを止めなかったら、私が止めてました」
「……心配かけて、すまん」
トーマスは苦笑しながら薬を飲み干す。
その様子を、エルミィも心配そうに見つめていた。
「導師……いたくない?」
――その目が、本気で心配している。
あっぶねー……もう少しで騙されるとこだった。
何が“導師”だ。新手の結婚詐欺か、新興宗教の勧誘員かよ)
(実際、自分で“宗教関係者”って言ってたしな)
(――詐欺は本当のことを混ぜて人を騙す。
マルカも、エルミィも……もう騙されてる)
(エルミィは、純粋すぎるんだよ。だから――)
(……俺が見張っていなきゃ)
そう思いながら、ミリウスはトーマスの様子をじっと見ていた。
トーマスは、何か言いかけて――やめた。
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