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ミリウスの独白
答えになっていない。
俺はエルミィのことを、
ただ――ブラックウッド家のお嬢様。
父違いの妹。
それ以上でも、それ以下でもないと思っていた。
……自分の母を他の男に取られた、とか。
そういうことを恨むようなガキでもない。
そんなはずだった。
じゃあ、なぜだ。
なぜ彼女は、俺にこれほどまでに執着する?
なぜ、母はあんなにも異常な行動を見せる?
父がブラックウッド家の姫に行った、あの“無礼”――
……だが、もしも二人が上手くいっていたら。
俺とエルミィは、この世に生まれていなかった。
俺は、いや……俺だけは、あの“過ち”を無意識に望んでいたんじゃないか?
自分でもわからない。
何も、わからないんだ。
なぜエルミィが、あんなふうに論理的に言葉を並べた時――
俺は、激昂したんだ?
……前に進むべきなのか。
後ろを振り返るべきなのか。
それすら、もう分からない。
俺が、二人を呪ったのか?
それとも、俺自身を呪っていたのか?
わからない……。
自分自身の感覚さえ、今は。
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これをトーマスに回答していたらミリウスの前歯全部なくなるコース。




