俺の妹を何処にやった。
ちょチョイ役で出演させたら主役を食い始めた。昔のハリウッドスターみたい。ブラックウッド家の使用人で下品で粗野の男だけだったのに。
次の瞬間、何も言わずにトーマスの襟を掴み、地面に引きずり倒していた。
馬乗りになり、感情のままに拳を振り上げる。
「俺のエルミィを、どこにやった――!!」
一発。
二発。
三発。
そして四発目を叩き込もうとした、そのとき。
「ダメ~~っ!!」
エルミィが――身体ごとぶつかってきた。
そのまま俺にしがみつき、泣きじゃくりながら叫ぶ。
「ダメ~~!! ダメ~~!! ダメ~~っ!!」
小さな拳で、俺の胸を何度も叩きながら。
トーマスはゆっくりと身体を起こす。
鼻は不自然に曲がり、左目は紫色に腫れ上がっていた。
「……40点。」
俺は、自分の拳がじんじんと熱を帯びていることに気づいた。
トーマスは、マルカの方を見やりながらぼやく。
「直情的すぎる。でも、それもまた良し」
マルカは深く一礼しながら、静かに答えた。
「ありがとうございます、導師」
ふと、エルミィに目をやる。
彼女は俺にしがみついたまま、小さく呟いていた。
「言った通りになった……言った通りになった……言った通りになった……」
その頬は、興奮で火照ったように真っ赤だった。
導師ってなんなんですかね。




