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病の踊り子

踊り子の娘が、涙を浮かべながらトマティへ駆け寄った。


「お、お館様……! どうかお待ちください!」


トマティが振り返ると、娘はその場で膝をつき、震える声で必死に言葉を紡ぐ。


「マルカ様は……私の命の恩人と、なる方です……!」


「なに……?」


トマティの眉がわずかに動く。


娘は胸元を押さえながら、はっきりと言った。


「お館様には黙っておりましたが、私はずっと胸に重い患いを抱えておりました。いつ命が尽きてもおかしくないと医師からも見放されていたのです」


その告白に、周囲から小さなどよめきが上がる。


「ですが先程、マルカ様に胸を掴まれた瞬間……すぐに病巣を見抜かれました。何も言わずとも、です」


娘の目が震えながらも輝きを増す。


「そして、薬を手渡され──『試すかは自分で決めな』と言われました。私は……どうせ長く生きられぬ命、駄目元で飲みました」


娘は自分の吐瀉跡を指し示し、震えながら続けた。


「すると……胸の奥で淀んでいたものすべてが、先ほどの吐き出しと共に消えたのです。信じられないほど呼吸が楽になり……今、こんなに身体が軽いのは生まれて初めてでございます」


娘はトマティを真正面から見て、強く言い切った。


「わかります──私は、もう全快しております」


静まり返る場。


トマティの瞳に、一瞬、揺らぎが走った。

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