247/254
売られた喧嘩も倍返し
おかしい。
普段なら「売られた喧嘩は即倍返し」のマルカさんが、なぜか大人しくトマティの話を最後まで聞いている。
……あの人が黙ってる=裏で何かしている、という確信が俺の背骨を冷たく撫でた。
案の定、マルカさんは俺たちの盃に酒を注いでいたお酌担当(踊り子)に、いつの間にか腕を回し、軽く悪戯を仕掛けていた。踊り子が思わず短く声をあげる(※強制的に嬌声を引き出した)と、マルカさんは満足げに口元を歪め、盃をぐいっと一気にあおった。
口の端から酒が伝い落ちるのも拭いもせずに、トマティを見据えたまま、低く言い放つ。
「──良いわ。その喧嘩、買ってあげる」
盃を卓に叩きつけたような音が響いた。
空気が、一瞬にして戦場のそれへ転じた。




