表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
242/252

無法者の挽歌

其れから三ヶ月の月日が流れ、俺たちはようやく龍王の世界の入口に辿り着いた。

そこには一枚の看板が立っていた。

――「此処から先、すべての希望を捨てよ」


マルカさんは無言で看板を見つめ、次いでマークワンに命じた。

「マークワン、この看板を焼却しなさい」


マークワンは即座にマルカ商会デリバリーシステムを起動し、背部から火炎放射器を展開する。

轟音と共に、炎が業火の如く看板を包み込んだ。


輻射熱が肌を刺す。俺は思わず顔を背けそうになるが、マルカさんは微動だにせず、炎の行方を見つめていた。

――熱くないのか?

俺は喉まで出かかった言葉を飲み込み、ただ見守るしかなかった。


やがてマークワンが火炎を止める。

しかし看板は――焼け落ちていなかった。

焦げ跡一つつかず、まるで炎を拒むかのように、そこに佇んでいる。


マルカさんは一瞬の逡巡もなく、素手で看板に触れた。

「マルカさんっ!」

思わず声が漏れる。

火炎放射の直撃を受けた看板に触れれば、大火傷どころでは済まない。掌がミディアムレアになってもおかしくない。


だが、マルカさんは平然としていた。

「……常温ね」

その瞳が理屈を超えた現象に挑むように細められる。


「科学への挑戦だな」

マルカさんが低く呟いた。

「こんな物質を看板に使うとは、龍王の世界――やはり侮れない」


俺は、看板よりもマルカさんの方が怖かった。

警告を確かめるためだけに、火炎放射器を使うなんて――

その無法と冷静さの混じった行動に、俺はただ息を呑むしかなかった


感想などを送っておもらえた、創作の励みになります。是非。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ