表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
239/254

トーマス修行時代

静かに二人の精霊娘とシグルのやりとりを聞いていたトーマスが、ようやく口を開いた。

「パンを焼く才能なんて、最初から“あってないようなもの”だぞ。」


シルフとノームが目を丸くする。

トーマスは続けた。


「美味しいパンを食べさせたい――その気持ちが、味に表れるんだ。

シグルは“人に食べさせられない出来”と言ったが、俺はそうは思わない。

あれは十分、人を喜ばせるパンだった。」


トーマスは穏やかにミリウスを見つめる。

「お前はエルミィを喜ばせたいと願って、生地をこねたんだろう。

シグルにはそれが邪念に見えたかもしれん。だが俺には、その“邪念”ごと美味いと思えた。」


小さく息をついて、彼は笑った。

「性の違いかもしれないがな。

好きな女の笑顔を思い浮かべながらこねたパンが、人様に出せないはずがない。」


トーマスは少し遠い目をして続けた。

「俺は大奥様にはお会いできなかったが、大旦那様から彼女の話は、修行時代に耳にたこができるほど聞かされた。

そんな彼女が――ミリウスの焼いたパンを“不味い”なんて言うはずがない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ