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豊穣と小麦の女神
パンの神様です。
外界を見る。
仲睦まじいカップルが、草原で抱き合っている。
私は――豊穣と小麦の女神。
私はカップルを見るのが好きだ。
このカップルにも、たくさんの祝福を授けよう。
未来を見通す目で、ふと視線を向けたとき、
私の心は――射抜かれた。
私の永遠と言えるほどに長き歴史の中で、
このような青年に出会うとは。
この気持ちは何なのだ?
私は今まで、観察してきた者たちが放っていたオーラを、
今――自分の身体から感じている。
これは、何だ?
早く会いたい。
早く触れたい。
近くにいたい。
目を離したくない。
この、狂おしい気持ち……。
私の心は、もう正常ではない。
……これは、一体、何なのだ?
愛の神です。




