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キスはコーヒーの味
「エドモンドさんの蔵書って……何です?」
トーマスが不意に切り出した。
「いや、もう“お義父さん”って呼びましょうか。
貴方の秘密が娘さん経由で暴露されそうですよ。」
エルミィはさらりと笑う。
「家に来れば見られますよ。隠すようなものじゃないですし。」
「いや……それって、お義父さんが一番触れられたくないやつでは。」
俺がつぶやくと、ルカが淡々と聞いた。
「どうすれば“あれ”がもっと持続できるのか。」
トーマスはスープを吹き出す。
俺はコーヒーをこらえきれず噴きそうになった。
「おい師匠!」
俺はトーマスを指差した。
「連れ合いが師匠の秘事を公表してるぞ!」
トーマスは視線を逸らす。
ルカは何事もなかったかのようにスープを飲んでいる。
エルミィも何か言いかけたので、
「やめろ、それ以上は言わなくていい!」
俺は慌てて彼女の口を掌で塞いだ。
するとエルミィが、いたずらっぽく目を細める。
「……じゃあ、キスで塞いで?」
小声で囁かれ、俺の耳まで一気に熱くなる。
「昨晩、あれだけしただろ……!」
俺の言葉に、エルミィは得意げに微笑んだ。




