エルミィは肉食
エルミィは食欲旺盛だった。
バスケットのパンだけでは足りず、今こうして食堂で遅い朝食を平らげている。
華奢な身体のどこにそんなに入るのか、俺には理解できない。
「昨夜はたくさん運動したから、お腹が空いちゃって。」
エルミィはにっこりと微笑みながらパンをかじる。
「お兄様も、これからたくさん食べてね。」
……いや、俺はほとんど動いてない。
リードしていたのもエルミィだ。
理由は明白だった。
エルミィは貴族社会で、父エドモンドから嗜み以上の技を仕込まれたと聞く。
叔母リゼリナの悲劇と、その後の複雑な家の事情――
親の因果は妙な方向で巡り、俺は昨夜その“成果”をたっぷり教え込まれたわけだ。
……このことをエドモンド本人に言えば、間違いなく蜂の巣にされるな。
「お兄様、したいことがあったらなんでも言ってね。タブーなんてないわ。」
エルミィの言葉に、同じテーブルでスープを飲んでいたトーマスとルカが同時にむせた。
「エルミィ、人前で二人の秘事を公言するのはタブーだ。」
「じゃあ、二人にもタブーなしで。」
「……そうですか。」
俺は静かにため息をつく。
――エルミィさんは、こうして“プレデター”に育て上げられたんですね。




