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エルミィはプレデター
エルミィは、じっと俺を見つめていた。
彼女は何も言わない。
俺も何も言わない。
――これで、良かったのだろうか。
マークワンが唐突にナレーションを挟む。
背後のマルカさんの指示だろう。
彼は「大陸間弾道配達」で簡易寝室を運ばせることもできると提案してくれたが、
俺は丁重に断った。
別に急ぐ理由もない。
エルミィは少し残念そうな顔をしている。
だがその視線は、草食動物の皮を被ったプレデターのそれだ。
――そして、その捕食者の牙は俺だけに向けられている。
彼女はなぜ、俺にここまで執着するのだろうか。
……いけない。
彼女のすべてを受け入れた“つもり”の俺が、
エルミィを疑うなんて。
ノームの件は、シグルと妖精三人娘に任せよう。
これは俺の出る幕じゃないし、出るべきでもない。




