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悪手
もう一度、エルミィの後頭部に手刀を落とそうとした――が、
その腕はルカに止められた。
「エルミィ様の情愛を、お考えなさいませ。」
ルカの言いたいことはわかる。
だが、俺だって自分の気持ちは彼女に打ち明けた。
これ以上、どうすればいいというのだろう。
師匠も俺と同じく朴念仁だろうし、
マルカさんは……色恋沙汰の話になると「リゼリナは父が好き」という謎発言をする色物。
童話の世界では恋愛指南役として絶大な信頼を誇る妖精たちも、
今は後ろで一塊になって震えているばかりだ。
……もう、当人に聞くしかないか。
俺は覚悟を決め、エルミィに向かって言った。
「エルミィ……俺はどうすればいい?」




