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腹ペコシグル

シグルが倒れると同時に、精霊娘たちが一斉に叫んだ。


「お義母様ーーーっ!!」


倒れたシグルの周囲に、彼女たちは蜂のように群がり、その身を囲む。


「未来の旦那様の揺り籠を殺させてはならぬっ!」


「絶対死なせないわ! だって、義母になるお方よ!?」


彼女たちの目がギラリと光り、牙を剥く。


マルカは少し楽しげに、髪をかきあげながら言った。


「安心なさい。健康にも命にも、何の問題もないわ。ただ――あの煙を吸うと、急激に消化機能が活性化して空腹に耐えられなくなるの。結果として、意識が落ちるだけ」


そう言ってにっこり笑う。


「マルカ生物部の研究成果、ね。まあ、うちの契約タレントを傷つけるわけにはいかないし?」


ミリウスはそのやり取りを眺めつつ、そっと目を細めた。


……彼の視線の先では、マークワンのマニュピレーターがそっとシグルの腕に触れ、微細な組織片を採取していた。


「……マルカさん。念のため言っておきますけど」


ミリウスは慎重な口調で続けた。


「シグルは一応、我々の仲間です。そして、龍界への案内役でもある。機嫌を損ねると、次の目的地に行けなくなりますよ?」


マルカは微笑みを浮かべたまま、まるで何も聞かなかったかのように応じた。


「大丈夫よ。起きたら食事を与えれば、すぐに忘れるわ」


「……それ、飼育理論ってやつじゃないですか」


ミリウスは頭を抱えた。




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